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肆拾仇話 ページ12







「律、侵入ルートの最終確認だ」

「はい、内部マップを表示します」




全員が無事に登りきって草陰に隠れた後、烏間せんせいの言葉で律を中心として侵入ルートの最終確認をすることになった。

目の前の裏口から入ってすぐ側の非常階段を上がって中広間を通る。それからまた階段を上がって展望廊下を裏側から回り込んでテラスに。
真っ直ぐ行った所にある階段をまた上がってコンサートホールを突き抜けてひたすらに階段を上ると目標地点に到着。


……9階だっけ、確か。取引が始まる時間まではもう少し。それまでそこに何事もなければいいけどね。




「行くぞ、時間が無い。状況に応じて指示を出すから見逃すな」




烏間せんせいがまずは裏口に入り、安全の確認が取れたらこっちに向かってハンドサインを出す。ロビー前まで全員が到着して様子を伺う。

……思ったよりも警備の数が多い。非常階段はすぐそこなのにこんなに居ると通過は難しい。





「何よ、普通に通ればいいじゃない」




右手にグラスを持ったイリーナせんせいがそう言った。
ふつーに、ねぇ。せめて誰かが警備の気を引いてくれると助かるんだけど。





「状況判断をできねーのかよビッチ先生!!」

「あんだけの数の警備の中どうやって…」




小声でそう言われている姿を見て思わず苦笑いになる。
ここで戦力になる人間が早くも戦線離脱になるのは避けたい、でもそれ以外に方法はない気がするし。

悶々と考えているとイリーナせんせいが千鳥足状態でフラフラとロビーの中へ入って行った。
そして警備の1人にわざとらしくぶつかって行った。




「あっ、ごめんなさい。部屋のお酒で悪酔いしちゃって」

「お、お気になさらずお客様」




なるほどね、これはオチた。
私が男だったらふつーにオチてる気がする。……中也さんと絡ませてみたい欲が否めない。




「来週そこでピアノを弾かせて頂く者よ、早入りして観光してたの。
酔い覚ましついでにね、ピアノの調律をチェックしておきたいの。ちょっとだけ弾かせてもらってもいいかしら?」




赤く染った頬を見る限り、本気で酔っているようにしか見えない。でもこれが演技だって言うんだから怖いよね、なんて軽く思う。




「えっ…と、じゃあフロントに確認を、」

「いいじゃない、あなた達にも聴いて欲しいの。そして審査して」

「し、審査?」

「そ、私のことよく審査してダメとこがあったら叱って下さい」




……心底怖くなってきた。

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たびのひと - はじめまして!とても面白いです!一日で全部読んじゃいました!更新待ってます! (2020年5月18日 23時) (レス) id: 06a128996a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:カノ | 作成日時:2020年1月12日 2時

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