46個目 インハイ決勝 ページ47
5人はコートの真ん中へと歩いていく。その背中を私はじっと見つめていた。
初めての公式戦決勝。
いつもテレビでしか見た事がなかった空間に、私は今立っている。試合に出る訳でもないのに手が震えた。
みんなはこれ以上の経験を何度もしてきたんだろう、尊敬する他ない。
私にできることは、みんなを支えるだけ。
「それでは予選Aブロック決勝、誠凛高校 対 秀徳高校の試合を始めます!」
「「「「お願いします!」」」」
決勝戦の火蓋が切って落とされた。
最初にボールを取ったのは誠凛。しかし秀徳の戻りは早く、既に全員マークについていた。
中「向こうさんは第1Q取りにいきたいよね〜」
ブツブツと監督が独り言を呟く。
バスケには"流れ"というものがあり、主導権を取ればその流れを自分達のものにできる、つまり点を取りやすくなるという事だ。
こちら側に主導権を取られれば誠凛は追いつけなくなるから何としてでも先取点を取りに来る。
『…!木村先輩!』
黒子くんが走り出しているのに気付いていない…!
そして黒子くんへとパスがいき、そのままゴールへとボールをまわし、その先では火神がダンクを決めようとしていた。
『練習試合で見せたアリウープ、』
誠凛が先取点を取る、誰もがそう思った瞬間、緑間くんがブロックした。
『よし!』
ボールは高尾くんから木村先輩へ。
レイアップシュートをするが誠凛も負けじとブロック、両チームとも先取点を譲らなかった。
それから両チームとも無得点のまま、2分が経とうとしていた。
『監督、これって…』
中「ふむ……均衡状態に入ったね」
マネージャーになってから私も勉強した。
この均衡状態に入ってしまった場合、点を取ったチームに流れがいく。そしてその流れをクォーター上で戻すのは困難だ。
そしてついに試合の流れが変わりだした。リバウンドを大坪先輩が取り、高尾くんへとボールをぶん投げた。
大「速攻!!」
ボールを取った高尾くんは前を見たまま、後ろにいた緑間くんへとパスを出す。
緑間くんのスリーは確実に決まる、先取点は秀徳だ。
その場にいた全員が秀徳が主導権を握ったと思った。
しかし、緑間くんがディフェンスについた瞬間、コートの端から端までボールがぶった切った。
『っ、あ、危な…』
私の見間違いじゃなければ緑間くんの顔面スレスレ通ったよね?え、わざと??
そしてそのボールを火神がすぐさま決めた。
これで主導権はどちらにも渡らないまま試合は進むこととなった。
159人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:雪泉 | 作成日時:2020年3月10日 19時