桃井さつきに成り代わったから、とことん原作を直してやろうと思った。

まさかとは思ったが ページ38

「……戻って、来たのか？」









目を開ければ、そこは家のリビングだった。
あまりに短い時間だったため、夢でも見たかのような錯覚を起こしそうだが、少しの疲労感があり、夢ではなかったことを教える。









「なんか呆気なかったな……」


「そうよね。もうちょっと何かあってもよかったのに」









急に聞こえたその声に振り返ると、母(オレの母親ではなく、さつきの母親)がソファーにもたれ掛かるようにして頬杖をついていた。









「え、な、なにが？」









まさか、母は、全部お見通しだというのか？
ならば母が、ループか、それともシーク……？









「『なにが』って……あなた、ドラマのこと言ったんじゃないの？もうちょっと争いくらいあったらよかった、ってそういう意味で『呆気なかった』って言ったんじゃなかったの？」









……なわけ、なかった。









「あ、え、ど、ドラマ？」









テレビに目を向けると、ちょうど終わったのか、ドラマのエンディングが流れていた。
オレは高鳴った胸を抑え、はぁっと一息吐いた。









「なんだ、ドラマか……」


「当たり前でしょ。あなた、なんのことを言ってたの？」


「いや、なんでもない」









＊









「おはようございまーす」


「おはようございます、桃井さん」









朝練に行けば、またいつもの無表情で迎えてくれる、黒子。
一瞬だけその左目が紫色になり、微笑んだ。

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