消えた自転車は知っている＊3＊

12☆エキスパートの大活躍・M Side ページ3

「説明するから、来いよ。」


そう言った和典のそばに、すぐさま和臣が歩みよった。



瞬発力のある和臣は、いつもすばやい。


次にアーヤが、そして最後にゆっくりと貴和が近よってきた。



「まずハンドル、ブレーキバーのわき、シートチューブ、クランク、フロントフォーク、それからサドル、シートピーラー。」


そう言いながら和典は、指で順番にそれらを差した。



「よく見てくれ。かなり傷ついているだろう。その傷の中にところどころ、緑色が入っている。」



さっきも見たけど、たしかに傷の中に、すりこんだように緑色が見える。




「小塚、これらについて説明してくれ。」



和典に言われて和彦は、自分の手のひらをわたしたちの前に差しだした。
(Ｐ197)


その上には、緑色でヒラヒラした皮のようなものがのっている。


「自転車の傷の中から取りだしたんだ。これは、塗料だ。」



そうそう塗料がでてきたのよ。



「金属は木の表面に塗るものだ。

ペンキとか、ワニスとか、漆とか、いろいろあるけど、これは、特殊な塗料だ。

オレの考えでは、たぶん自転車の塗料だと思う。

自転車の塗料っていうのは、ウレタン系とかラッカー系とかいろいろに分かれていて、一台の自転車のなかでも部分によってちがうものが使われるんだ。

たとえばサビの出やすいところには、サビを防ぐ塗料とか、うるさい音を出してそうなタイヤまわりには防音用塗料とか。」



えーっと、ふむふむ。



わっかりやすいほど顔に出るアーヤを見ると......





予想通り、びっくりした顔。



きっと、このことも知らなかったんだ。




「それで自転車のメーカーによって、それぞれ特徴のある塗料を使っているから、分析してみれば、どこの会社の何年型の車の塗料かは、すぐわかるんだ。

あとでやってみるけど、この色の感じからしたら、外国の車だと思うな。
ＢＭＷとか、アウディとか。

上杉、これでいい？」

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