消えた自転車は知っている＊2＊ (ページ31)

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政治的動き・アーヤSide ページ31

私は、感心して言った。

「これって、よっぽどのコネがないと、できないことよね。黒木クンって、いっぱい友だちがいるんだ。」

黒木クンは、ちょっと肩をすくめた。
(P１５５)

「オレはＫＺだからね。仲間の連中が協力してくれるし、みんな、顔広いから。だけど人の話だけじゃあぶないから、大事なところは、政治的に動いて情報をおさえたんだ。」

政治的？

私が不思議そうにしていると、黒木クンは、笑いをうかべた目で、またかといったように私をにらんだ。

「こっちのほしいものを手に入れるために、向こうのほしいものを出してやる。
そういうかけ引きのことを、政治的動きっていうんだ。

まわりの話でだいたいのことを押さえておいて、最後には本人か、本人にいちばん近い友だちの口からはっきりとしたことを聞きだす。

そのために、そいつらのほしがっているものや、したがっていることをあらかじめ調べておいて、それと交換にしゃべらせるわけ。」

ふうん。

私は、またひとつ物知りになった気がした。

学校や秀明で教えてくれないことを、黒木クンは、たくさん教えてくれる。

「そういうことは、オレ、得意なんだ。
ちょっと話してればすぐ、相手が何をしてほしいのか、どんなことに興味を持ってるのか、どんな性格なのか、わかる。
若武が、このリストの調査をオレにまかせたのは、オレのそういうところを知ってるからさ。若武って、あんなにガチャガチャしてても、よく人間を見てるよ。
自分のまわりの人間をね。
あいつが一番見ていないのは、自分自身なんだ。
世の中できちばんあいつをわかってないのは、きっとあいつだぜ。」
(P156-157)

私は、ちょっと笑った。

そうかもしれない。

「ま、とにかく今リストに残ってるのは、アリバイもなく、距離的にも犯行が可能で、ダイヤル錠をあけることができそうもないと思われるこのふたりだけだ。」

言いながら黒木クンは、マーカーのチェックのついた名前のひとつを指さした。