26.置き土産 ページ33
はぁ。
盛大なため息が飛び出す。
朗らかな早朝。 祝日。なによりも散歩日和!
三拍子揃っていたのでぶらぶらと外を歩こうと決意。
「いざ、出発」と玄関の扉を開けたところ、冒頭のため息につながる。
私ではない女性だったら悲鳴ものの案件である。
ドアを開けたら、大柄な男が突っ立っていた。
知り合いだったらまだしも赤の他人。
私と顔を見合わせても、うんともすんとも言わない。
ただ虚空を見つめている男。
うら若き女性なら不審者だと疑い、直ちにドアを閉めるべき状況だ。
しかしながら、その男は私以外の人間には存在自体、認識されないのであった。
その男、すでに
幼い頃は幽霊と生身の人間を見分けることが出来なかったが、今では一目見ただけで違いがわかる。
よく幽霊というと白い着物を纏っているとか足がないとか透けていると言われるがそんな事はない。
見た目は生身の人間となんら変わりがない。
異なる唯一の点は纏っている空気感が違うことだけだ。
これは私の感覚になってしまうので言葉にするのは恐縮だが、人間をポカポカと表せば幽霊はシンシンとしている。
もう感覚的なものなので、ぱっと見ただけで幽霊だと認識出来るのである。
もう一度、男を見るとため息が出てしまう。幽霊を引き寄せてしまう体質も困ったものだ。
いま思いつく二択。
目の前の幽霊を思いっきり無視し続けるか、思い切って干渉するか。
男の顔をきちんと見直したら、自ずと後者にすることを決意してしまった。
なんとも美形な幽霊だったのだ。
うつくしさに弱すぎる私だが、心のどこかにあった罪悪感も背中を押していた。
猫の霊の未練をはやく知れば人の命を助けられたかもしれなかった。
その事実が、ずっと喉につっかえていた。
だからこそだろう。すんなりと関わることにしたのだ。
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司(プロフ) - 黒猫さん» コメントありがとうございます!こんなハチャメチャな夢主、需要あるのかな?と不安だったので、そう仰って頂けると嬉しいです!オチはですね……。後々あかしますね。個人的にオチを先にお知らせするというのはどうにもピンとこなくて……個人的な見解で申し訳ないです (2017年7月28日 18時) (レス) id: b086ef1462 (このIDを非表示/違反報告)
黒猫 - うわぁぁぁ文才ありすぎません?設定がしっかりしてて読んでて楽しいです!!渡辺ちゃんの謎?も気になりますし…笑笑。あと気になるのはこの小説って誰落ちなんですか?(太宰さんがいいなぁ…←図々しい汗)更新頑張ってください!!! (2017年7月26日 13時) (レス) id: a8e89100ce (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:司 | 作成日時:2017年7月2日 15時