鬼だった娘は幸せになりたい【鬼舞辻無惨】 (ページ12)

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ぐぐっ、と伸びをする。
昨日の余韻が、まだ残っている。
いつぞやのほわほわとした感覚に再び襲われていることを自分でも怖くなるが、運命だとか、幸せだとか言う言葉に弱いことをあらためて実感した。

きっと、誰もがみんな“めでたしめでたし”で終わるおとぎ話を読んだことがあるだろう。
きらきらとして、勇気があって、王子様が居て。
実はそんなヒロインに憧れを持っていた。

それにしても…
｢前世かあ、｣

｢どうしたんだ琴枝？｣
｢ふがふが｣

どうやら考えていることを口に出してしまっていたようだ。
まだ人のまばらな教室で、近くに座る竈門兄妹が私の独り言を拾った。
そんなに思い詰めた顔をしていたのだろうか、2人して眉を下げて顔を覗き込む。
｢あっ、いやなんでもないの。ごめんね。｣
流石に前世だ何だとほざく馬鹿だとは思われたくないので、手を振りながら否定した。

5時間目の数学の授業。
本日何度目かの記憶の反芻と、満腹感によって薄目で黒板を眺める。

｢琴枝、俺を馬鹿にしてんのかァ？この問題解いてみろォ。｣

皆様お察しの通り、数学の時間にうとうとするのはご法度だ。
不死川先生は容赦なく難問を私にぶつけてきた。
いやなんとか解いたけども。