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なんて壮絶な話だろう。
まるで悲恋小説のようだ。
話を聞いて、そう思った。
きっと、これがこの人の前世、というものなんだろう。
鬼舞辻さんは本当に掻い摘んで話したような気もするけれど、何故か、感情や情景がダイレクトに入ってきた。
「きっとその女性は、幸せではなかったでしょう。」
そうぴしゃりと言い放つと、鬼舞辻さんは難しげな顔をしてみせた。
「でも、女の人は最期まで自分を鬼にしたひとのことを愛して、そのひとの為に命を尽くしたんですよね。」
──────じゃあ今世では、その女性がもういいって言うくらい幸せにしてあげたらいいじゃないですか。
「ふ、お前らしい。そうだな、幸せにしよう。」
プロポーズのような言葉。
その赤い目は、こちらをしっかりと射抜いていて、私の口からはよく分からない声と、呼吸の音だけが抜けていった。
この人は、どうして私をみて、嬉しそうに笑うんだろう。
「鬼舞辻さん、どうしてそんな目で私を見るんですか…」
「琴枝、無惨と呼べ。」
「無惨さん、そんな、優しい目で私を見ないで、」
「なぜだ?お前が、幸せにしてくれと言ったのだろう。」
─────見ないうちに随分と鈍感になったものだ。
いまだに疑問顔の私の、頬を掴んで鬼舞辻さん、もとい無惨さんは言った。
「私が幸せにしたいのはお前だ琴枝。」
どこからか少し季節はずれの、青いカーネーションの香りがした。
──────────
青いカーネーションの花言葉
「永遠の幸福」
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作者名:白桃。 | 作成日時:2020年1月31日 22時