語り/雑渡昆奈門 ページ33
私が唯一、愛した人よ。
私はこの世界が何度繰り返されようと、一瞬たりとも彼女を忘れたことはない。他の者が彼女を忘れてしまっても、私の記憶の中でずっと彼女は存在する。
_____不知火A。
彼女は前へ進むことを選んだ。
仲間よりも“未来”を選んだ。
最初は私から逃げられないように、ずっと彼女を捕まえておこうと思った。どんな手を使ってでも、私は彼女をこの世界に引き止めておきたかった。
だけど私は、彼女の手を離した。
彼女の目があまりにも真っ直ぐ前を見つめていたから。
A、私は君を愛していた。
誰よりも愛していた。
君さえそばにいてくれれば、それで良かった。
例え君が、私ではない他の誰かを選んだとしても。
だが、彼女は何も言わずこの世界を去ってしまった。
もう私が愛したあの子はここにはいない。
それでも私は彼女を想い続ける。
きっと彼女はまた再びこの世界にやってくる。
なんとなくそんな気がするのだ。
Aちゃん、勘違いしないでね。
君は自分からこの世界を旅立ったんじゃない。
私が君を逃がしてあげたんだ。
君は私のモノだ。
次は絶対逃がさない。
拝啓、愛しい君へ。
今日も私は君の帰りを待っている。
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作者名:ずみ | 作成日時:2019年11月2日 17時