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そして走り出してすぐのこと。
私は人の気配を感じ、走るスピードを上げた。
その気配はずっと私を追ってくる。
私はこのままでは埒が明かないと思い、走るのをやめ、後ろを振り返った。するとそこには、顔から全身にかけ包帯を巻いた男が木の上にいた。
「やっぱり戻ってきたんだね。君があんなにも見たがっていた未来はそんなにも辛かったかい?」
男がそんなことを言ってきた。
「何を、言ってるの・・・?」
「折角、君を逃がしてあげたのに。」
「ど、どういう・・・」
彼は木の上から降りてくると、一瞬にして私の目の前までやって来た。そして私の耳元に口を寄せて……
“君は私のモノだ”
そう低い声で囁いた。
彼の眼は本気だ。
本気で私を自分のものにしようとしている。
でもどうして……?
「君が私のことを忘れていても、私はずっと君のことを覚えている。私はいつだって君の味方だ。」
「貴方、一体誰なの?どうして私のことを知ってるの?」
「私はタソガレドキ忍軍忍び組頭、“雑渡昆奈門”だ。君のことはずっと昔から知っている。早く私のことを思い出してね、Aちゃん。」
彼はそう言うと、風のように消えていった。
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作者名:ずみ | 作成日時:2019年11月2日 17時