36話 ページ39
再びシーグラスに触れてみると、熱くはならなかったが右目に違和感を感じるようになっていた。
目に浮かんだものは、自分がこちらを見て、右目の色を変えさせているところ。
「?!」
思わずシーグラスを海に投げ込むと、今度は海の中の情景が浮かんできた。
取り上げようとすれば驚くことに、波が腕を這うように上がってきて
そのまま手にシーグラスを収めたのだ。
激しく打ち付ける心臓が混乱を引き立たせる
Aは冷静にこの状況を片付けようとしていた。
「(さっきの、空耳とは思えない歌声、詞…
そして…今目の前にした不思議なできごと
…『死ぬる時君は海になる
死なずして 海 に な れ ば』)
真の…女神」
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「つ、つまりお嬢が海の女神というものであると?」
「そんなもんマジにあるんすか…?」
Aが右目に掌をかざすと、色が戻ると共にシーグラスの光も消えた。
「…はっきりしたことは、まだわからない。
でも悪魔の実だって、戦いに無縁なところじゃ幻だってバカにされるかバケモノあつかい。
…子へ受けつがれるってあの歌は言ってた
わたしのご先祖さまが、代々その不思議な力を隠しながら、ここまでつなげてきたのかもしれない。」
二人はこのあまりにも奇妙な話を何故か信じずにはいられず、固唾を飲んだ。
「…でもあれからあの歌は聞こえてこないの
夢かと思おうとするけど、その、わたしにだけ力を出す水晶と、思いどおりに動く海がそうさせてくれない」
「…それから、その能力は…?」
「…初めはたいへんだった、勝手に右目があつくなって、どこかも分からない浜辺が次々と浮かんできて…
でもすこしずつ、自分でも練習していったら、今みたいに見たい時に見たい水晶のある場所を映し出すことができたの
操る方も、まだ小さいけど波も起こせるし渦も作れるようになった」
そういって掌を出すと、小さな水球を作り出した。
渦になったり、動物の形に変化したり、小さいながら自由自在にそれを操っていた。
二人は目を見張った
信じてはいたが実際みてみると驚くものである。
Aはため息をついてぱたっと手を下ろす。
「これ、けっこう疲れるんだ。
今はこの大きさが限界
でも…これからもっと修行して、巨大な力で動かせば…きっと海軍の力になれる」
その発言と瞳には、とても5歳とは思えない賢さと覚悟が宿っていた。
二人は尊敬と共に、心配の思いを胸に秘めた
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作者名:ひはる x他1人 | 作成日時:2017年7月28日 18時