デラシネ〔8〕【終わりのセラフ×ワートリ】

力と意義と責任と ページ13

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『未来が視えるってどんな感じなんですか』



おれが自身の持つ力について話すと、確か彼女はそう言った。

「こっち」に来て間もない頃。ボーダーに入る前。＿＿＿まだ、全てに無頓着だった彼女。

そんな時期に投げ掛けられた質問は、Aの初めてのおれへの興味だった。


『少なくともあまりいい気分ではないですよね』


『毎回がそうとも限らないよ。
これから起こる悪い未来を避けられるしね』

『‥‥‥誰かが傷つく未来を視ても？』

『それを実現させないのが、おれの役目だ』


そう答えると彼女はじっとおれを見つめ、『‥‥‥妙に俯瞰してるんですね』と呟いた。


『俯瞰？
‥‥‥まぁ、それは正しいね』

『あと子供のあどけなさが足りない』

『それお前が言うの』


おれから言わせれば彼女も十分＿＿＿それこそおれより物事を俯瞰してる。子供らしさも足りない。まだ13歳なのに。


『おれのこの力は生まれ持ったものだ。どうにかできるようなものでもないし、今更逃げようとも思わないよ』


それはそっちも似たようなもんだろ。

その問いに対し彼女は無表情に肯定した。


『力ってのは望んでても望んでなくても、手に入れたからにはそれなりの覚悟も責任も必要だ。
そう考えると まぁ、確かに世の中は理不尽で溢れてるね。Aが前言ったみたいに』


『‥‥‥その力が、嫌になったりとかは？』

『ないこともない、かな。
Aは？』

『‥‥‥私の鬼(ちから)は元々望んで手に入れたものですし』


でも、と視線を落として加えた。『別の理不尽(ちから)に嫌になったりは、します』


『‥‥‥“家”？』

『‥‥そうですね、はい』


Aはこれまで、その「家」とやらに反抗したことはあまりなかったと言う。
反抗してもどうにもならないと、幼くして知ってしまったから。


人間は皆そうだ。
敵わないと悟ってしまった以上、それに対する抗いをやめてしまう。

勝てない相手に粘っても時間の無駄だと多くは考えるからだ。


『‥‥‥勝てない理不尽(ちから)に抗っちゃダメなんて誰も言ってないのにな』

『人は納得いかなくても割りきって生きてくものでは？』

『大半はね。でも、そうじゃない人もいる。この違いって、なんだろうね？』

『‥‥‥、根性？』

『“心の強さ”だよ』

『‥‥‥15の若造が何言ってんですか』

『おれからしたら13のガキが生きる意味だのなんだの言ってる方がおかしいよ』

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