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第229話 ページ1

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「A、起きてるか?」


小さめにノックして、声をかける。
時間は夜11時半。さすがに寝ているだろうとは思っていたが、「起きてるよ。どうぞ」と中から返ってきた。

ドアを開けると、ぼんやりとベッドに座っている彼女を捉える。
そうしているときは大抵刀に触れていて、今回もそうだった。膝の上で鞘に手を置いて、じっと見つめていた。
彼女はその刀を脇に置き、「立ってないで座ったら?」とぽんと隣を叩いて促してくる。

「ずっと刀持ってるよな」

「公平ってそうしてるときに限って居合わせるからねぇ。そう見えるだけだよ」

「何で持って座ってんの?」

「喋ってる」

「喋る? 刀と?」

「そ。変人でしょ」

へらっと笑う。何だか、らしくない顔だと思った。「こちら側」では、そんな顔を見ることが多い。

「そんで、どうしたのこんな時間に。夜這いでもしに来た?」

「夜這っ‥‥!? なわけないだろ!」

「わー、すごい動揺の仕方」

「こちら」にいる時のAは、表情が乏しく見えた。笑うと言っても張り付けたような笑みで、「向こう」で見せていたものと全然違う。おれには、それが苦しい。

「‥‥昼間の、質問の続き。しに来た」

「‥‥へぇ」

感情のこもっていない返事にちらりと彼女を盗み見る。良いとも悪いともとれない顔だった。
彼女が許可する以上に踏み込んでしまえば、Aとおれの間の「何か」が変わってしまうかもしれない。ずっとそう考えていたが、Aを何も知らない自分に嫌気が差した。

「好きだ」なんて言葉だけは簡単に言える。けど、言っただけで何かが変わるだろうか。

おれたちは気持ちが同じでも付き合っている訳ではない。
付き合うことを拒んだAは、「他人に自分の中まで干渉されること」を拒絶している。

彼女はいつも自分の深くまでを話さない。それは意識の根底に「知られたくない」というのがあるからだろう。


「‥‥“他とは度合いが違って”って、何がどう違うの」

だからこの質問は、今までの平穏な関係を壊しに行ったようなものなんだろう。

第230話→



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じゆんきむ(プロフ) - 返信ありがとうございます。楽しみに待ってます! (1月11日 21時) (レス) id: 3005c0f58d (このIDを非表示/違反報告)
夏向(プロフ) - じゆんきむさん» 返信遅くなりすみません。現在修正中なんですがリアルが忙しくて…。年度内には再公開できればと思っております (1月11日 2時) (レス) id: b371f4960f (このIDを非表示/違反報告)
じゆんきむ(プロフ) - 7個目の話はいつ公開されますか?? (12月27日 1時) (レス) id: 3005c0f58d (このIDを非表示/違反報告)
雫鶴鳩 - ありがとうございます!!見捨てなんてしませんよ(笑)これからも更新頑張ってください!! (2017年10月21日 17時) (レス) id: 86c88d0ffc (このIDを非表示/違反報告)
夏向@テスト期間は低浮上(プロフ) - 雫鶴鳩さん» (続き)読みにくいかと思われますが、今後はそのように解釈していただけると嬉しいです。これからもこの小説を見捨てないでいただけると大変ありがたいです! (2017年10月21日 10時) (レス) id: 2e5a8262c2 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:夏向 | 作成日時:2017年10月10日 16時

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