第271話 ページ47
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1人、ソファーに座らされたAは居心地悪そうに揃えた膝を見つめ続けていた。俺達はそれを囲むように床に胡坐をかいたり体育座りをしたり。俺が彼女の立場なら怖くて泣いていたかもしれない。明らかに説教をされそうな構図だからだ。
「‥‥あの、なんでこんな配置なんですか? もうちょっと話しやすい雰囲気にしようとかいう配慮は‥‥」
「おまえ、できない約束はしないって言っただろ。そんな配慮しなくても話してくれるだろ」
「‥‥私に対するその謎の信頼感はなんなんですか」
「逆に、不信感があると思っていたのか?」
「‥‥そりゃあ、そうでしょう。ここ最近で信用を裏切るようなことしてきたのは、確かですし」
そう言って目を伏せて、自嘲気味に口の端を上げた。そんな顔をするな、と言っても百夜は多分聞かないだろう。
「単刀直入に言う。百夜、取引を破棄しろ」
ぴくりと彼女の肩が動いて、でも視線は上がらなかった。理由を問うように「意味がわかりません」と言った。「三門と私だったら、三門を選ぶに決まってます」
菊地原が眉を顰めた。「‥‥何でそこで三門の話が出るんですか」
「‥‥中将は、私が4年間過ごした世界に対して少なからず興味を持っていました。何人規模の人間がいるのか、文明のレベルはどの程度か‥‥そこに吸血鬼はいるのか。別に侵略しようというわけではないと思います。そんなことしている余裕はないので。意味もありませんし」
「じゃあ、何が問題なんだ?」
「‥‥あの人が興味を持つと、それが何であれろくなことにならないと思ったの。三門の───“向こう”の秩序を、平和を守るためにリスクは絶対に減らしておきたい。何より‥‥それによって生じる未来の分岐点を、無駄に増やしたくない」
未来の分岐点、という言葉に、全員の脳裏に同じ人物の姿が浮かんだ。百夜はここにいる5人の安全を考えるだけでなく、迅悠一という男の肩にかかる責任を減らそうとしていたのだ。
「おまえの考えは理解できる。だがそれとこれとは別だろう。迅だっておまえが自分のために人体実験に協力しているなんて知ったら、それこそ自分の責任だと考えるぞ」
「‥‥あの人には、私の選択の結果に責任を感じなくていいと言ってあります」
「あれはそれでハイそうですかと受け入れるような人種じゃないとおまえもわかっているだろう」
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じゆんきむ(プロフ) - 返信ありがとうございます。楽しみに待ってます! (1月11日 21時) (レス) id: 3005c0f58d (このIDを非表示/違反報告)
夏向(プロフ) - じゆんきむさん» 返信遅くなりすみません。現在修正中なんですがリアルが忙しくて…。年度内には再公開できればと思っております (1月11日 2時) (レス) id: b371f4960f (このIDを非表示/違反報告)
じゆんきむ(プロフ) - 7個目の話はいつ公開されますか?? (12月27日 1時) (レス) id: 3005c0f58d (このIDを非表示/違反報告)
雫鶴鳩 - ありがとうございます!!見捨てなんてしませんよ(笑)これからも更新頑張ってください!! (2017年10月21日 17時) (レス) id: 86c88d0ffc (このIDを非表示/違反報告)
夏向@テスト期間は低浮上(プロフ) - 雫鶴鳩さん» (続き)読みにくいかと思われますが、今後はそのように解釈していただけると嬉しいです。これからもこの小説を見捨てないでいただけると大変ありがたいです! (2017年10月21日 10時) (レス) id: 2e5a8262c2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:夏向 | 作成日時:2017年10月10日 16時