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第244話 ページ16

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「協力者は、真昼だな」

「私が主導したことではありません。姉は協力者ではなく首謀者です」

「目的は」

「実験動物として失敗して生まれた私を柊から守るために、姉が戸籍を改ざんしました」

実験動物、と聞いて太刀川さん達が眉をしかめた。先程から感情が表に出すぎだ、と思ったが、今回の中将の矛先は私に向いているので大きな問題はないか、とも思った。

「失敗した、と判断した根拠は」

「根拠なんて。研究員の顔を見てればわかります。どれだけ薬を入れても反応が無いことは私も自覚してましたし」

本来なら姉のように鬼を宿して生まれるはずだった。だがどういう訳か鬼は植え込まれていなくて、それを知った姉は私が実験に失敗して死んだことにした。

薬の過剰投与による中毒作用。姉が自宅に戻った時にはもう既に死んでいた、という筋書きだ。

姉は人並みに家族を思う心を持っていた。柊では家族なんてあって無いようなものだ。それでも姉は同じ母親から生まれた私を、シノアを守ろうと手を回した。私が柊を出てからも何度か会いに来たし、気にかけてくれていた。

あの人がいつから変わってしまったのかはわからない。柊真昼という人間について私は深くを知らない。変わってしまったのではなく私にそれまで見せていた方が偽物の可能性だってあった。


ある日彼女は言った。柊に戻りたいか、と。その質問の意図はわからなかったが、私は正直に戻りたくないと言った。

シノア()に会えないのは少し寂しかったけれど、あの子は私を覚えていない(・・・・・・)から。戸籍上は死んでいる私の居場所はあそこにはもう無いとわかっていたのもある。

───あれは、確か。滅亡の日(クリスマス)を2日後に控えていた日の出来事だった。


「それを知っているのは誰だ?」

「姉だけですね。シノアは記憶消しちゃったので」

一瞬、グレンの目がほんの少しだけ細められた。中将は私の方を見ているから、それには気付かない。


「‥‥ねぇ、兄さん(・・・)。私に───欠陥品に、何を求めてるんですか? あなたが興味を持ちそうなものなんて、私は持ってないのに」

本心だった。この人が欲しがるものを私は1つも持っていない。ただ戦闘能力があって拷問に耐えられるだけの訓練を施されているだけ。特別な才能もカリスマ性も、柊が恐れるだけの脅威も、何もないのに。


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じゆんきむ(プロフ) - 返信ありがとうございます。楽しみに待ってます! (1月11日 21時) (レス) id: 3005c0f58d (このIDを非表示/違反報告)
夏向(プロフ) - じゆんきむさん» 返信遅くなりすみません。現在修正中なんですがリアルが忙しくて…。年度内には再公開できればと思っております (1月11日 2時) (レス) id: b371f4960f (このIDを非表示/違反報告)
じゆんきむ(プロフ) - 7個目の話はいつ公開されますか?? (12月27日 1時) (レス) id: 3005c0f58d (このIDを非表示/違反報告)
雫鶴鳩 - ありがとうございます!!見捨てなんてしませんよ(笑)これからも更新頑張ってください!! (2017年10月21日 17時) (レス) id: 86c88d0ffc (このIDを非表示/違反報告)
夏向@テスト期間は低浮上(プロフ) - 雫鶴鳩さん» (続き)読みにくいかと思われますが、今後はそのように解釈していただけると嬉しいです。これからもこの小説を見捨てないでいただけると大変ありがたいです! (2017年10月21日 10時) (レス) id: 2e5a8262c2 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:夏向 | 作成日時:2017年10月10日 16時

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