第241話 ページ13
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「相変らず悪趣味ですね、中将は」
はは、という乾いた笑い声は疲労を欠片も感じさせなかった。
両手両足を拘束されているその姿に思わず目を逸らしそうになる。彼女はうっすら笑みを浮かべており、どこか狂気を感じてしまった。
拷問によって正気を失ったのかとも考えたが、「なんでグレンもいるの?」という問いかけにどうやら精神状態は正常らしいということに気づく。
「命令違反で懲罰はごめんだからな」
「あは。ここまで連れてきちゃったんだから1か月廊下の拭き掃除ね」
「無駄口を叩くな、百夜」
柊暮人が書類の束を持って奥から現れた。彼女はそれに肩を竦めて口を閉じる。
柊暮人は従者の女を外に出したが、一瀬さんを追い出すことはしなかった。「懐かしいだろう、グレン」とAが座らされている椅子の背もたれに手をかける。
「昔もこうやって、拷問しているところを見せたな」
「どいつもこいつも、懐古厨か? 昔話に興味ねぇんだが」
「はは、たまにはいいんじゃないか? 過去から学ぶことは沢山ある」
「へえ、例えば?」
「そうだな。こいつが、あの時のシノアのように口を割らないということとか、な」
「だから新しい自白剤を使ったって? それにしては効果がなさそうに見える。ケロッとしてんじゃねぇか」
「自白剤は使っていない。意味がないからな。そんなことよりも俺は、ある疑念を検証する。治験よりもよっぽど有意義な検証だ」
おれ達は本当に「人質」なのだろう。彼女に何かを話させるために、この場へ呼んだ。だからおれ達が口を開かなくても、話は進む。
「私、なんにもしてないんですがね」
「俺はお前の抗議を聞き入れた。そしてこの者達から手を引くと言った。今度はお前が俺の要望を聞くべきじゃないか?」
「あれは取引でしょう」
「抗議の受け入れと取引は別だ」
彼女は面倒そうに溜息をついた。取引とは何だ、と思ったが、それは後から聞き出せばいい。
一つ咳払いをした柊暮人は、言った。
「お前は、何者だ?」
それはとても端的だった。だが、それでいて核心を突くような質問でもあった。
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じゆんきむ(プロフ) - 返信ありがとうございます。楽しみに待ってます! (1月11日 21時) (レス) id: 3005c0f58d (このIDを非表示/違反報告)
夏向(プロフ) - じゆんきむさん» 返信遅くなりすみません。現在修正中なんですがリアルが忙しくて…。年度内には再公開できればと思っております (1月11日 2時) (レス) id: b371f4960f (このIDを非表示/違反報告)
じゆんきむ(プロフ) - 7個目の話はいつ公開されますか?? (12月27日 1時) (レス) id: 3005c0f58d (このIDを非表示/違反報告)
雫鶴鳩 - ありがとうございます!!見捨てなんてしませんよ(笑)これからも更新頑張ってください!! (2017年10月21日 17時) (レス) id: 86c88d0ffc (このIDを非表示/違反報告)
夏向@テスト期間は低浮上(プロフ) - 雫鶴鳩さん» (続き)読みにくいかと思われますが、今後はそのように解釈していただけると嬉しいです。これからもこの小説を見捨てないでいただけると大変ありがたいです! (2017年10月21日 10時) (レス) id: 2e5a8262c2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:夏向 | 作成日時:2017年10月10日 16時