劣等感を抱いた。【及川徹】【ハイキュー!!】 (ページ5)

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Episode3 ページ5

兄は青葉城西でかけがえのない仲間に出会えたといつも言う。これ以上無いくらいの大切な仲間だと。

はじめくんはもちろん、花巻や松川はここで出会えなければきっと一生交わることは無かったと思う、本当に出会えてよかったと以前兄は話していた。

今日も兄は人気者だ。
教室に着くなり兄は女の子たちに囲まれた。
周りの男子生徒は呆れたように笑っていた。

その光景を眺めることも私には辛いことだった。

兄とそっくりの顔をしているはずなのにどうして、なんて考え出したらキリがないことは私が1番よくわかっている。

「及川サン」

ホームルーム前の賑やかな教室で私をそう呼んだのは花巻だった。

『珍しいね、花巻がそう呼ぶの。教科書？』

「ご名答！コミュ英の教科書かーしてっ！」

私は軽く頷いて教科書を出そうとカバンを手に取った。

「あいつは今日も人気者だな〜、俺にも分けろって」

『まあ徹は顔もいいし性格も悪くないしね。背も高くてスポーツ万能、モテない要素ないもん』

「なに、Aもあいつのファンなの？」

『違う、でも事実だから』

私は『はい』と教科書を差し出した。花巻は女の子に囲まれる兄を見ながら受け取った。

「Aだって美人なのにな」

花巻がこちらを向いてそう言うと、ガラリと扉が開いて先生が入ってきた。

「やっべ、これサンキューな！」

『え、あ……』

花巻は走っていってしまった。
私は花巻の言い放った言葉が気になってしまった。

確かに兄に似た顔をしているのは事実だが、決して美人とは言えないと思う。どちらかと言えば女性的ではなく、中性的な顔つきではあるし、男勝りというか男性的な部分も多い。

美人という言葉が似合うようには到底思えなかった。

お昼休み、私はお弁当を持って席を立った。

「A、今日も一緒じゃないの？」

『うん、ごめんね』

教室を出ようとすると、はじめくんの所に行こうとした兄に声をかけられた。

私はそう言って兄に背を向けて教室を出た。

あの2人と一緒にお昼なんて絶対に無理。
中学の時や高校2年までの段階でどれだけの悪口を言われてきたことか。けれどそんなのは兄もはじめくんも知るわけが無い。だからこうやって兄から逃げるようにお昼は1人で食べる。

「あれ、Aさん」

古い校舎の屋上へ続く階段。普段は誰も来ない。
いつも私はそこでお昼を食べているが、初めて来訪者が来た。けれど相手はよりにも寄って…と思ってしまう相手だった。