#234【依頼】 ページ44
NOside
4区に存在するマスク屋は今日も一人でマスクを作る。
「ラク、死んじゃったね」
「やっと完成したのに勿体ない」
マスク屋の主人であるウタの発言で訪問者であるイトリは狐の面を見つめる。
「ウーさんの初めての依頼だったのに・・・」
ウタが思い出すのは初めて出会ってから随分と年月が経った頃だった。マスク専門店を開いたはいいがひっそりと隠れるように開いたお店には誰も来る気配が無かった。
何の前触れもなくいつも通り現れる影乃にウタは違和感を感じた。
最近見かける“喰種”をつれず、一人で来た影乃はやはりいつも通りで何か違和感を感じる。
────ふーん、ここが君の居場所か
趣味で開いたお店は4区の“喰種”が頼みに来るぐらいで新規のお客など来る事がなかった。
────何?まだ客来た事ないの?
暇そうにしているウタをからかいに来たのかと思ったら影乃は目の前の丸椅子にドカリと座った。
────俺のマスク作ってよ、勿論最ッ高のヤツ
イメージを膨らませる為に採寸中に初めて影乃と喧嘩以外の事をした。いつもなら顔を合わせる度に拳を振るう。それが違和感の正体だった。
初めて穏やかな空気で影乃とお喋りをした。好きなもの、嫌いなもの、趣味、特技、いつも何をしているのか。
影乃はウタの質問に淡々と答える。楽しい時間はすぐに終わる。連絡先を聞き、店を出る前に影乃は半分だけ後ろを振り向いた。
────いつか俺の仲間のマスク依頼するよ
ふわりと微笑み影乃は店を出ていった。
「いつか届くと思うよ」
輪廻転生を否定していた彼だが、彼なら何年後、何十年後、何百年後に記憶があるまま産まれそうだとウタは思った。
そしてまた多くのヒトや“喰種”を引っ掻き回すだろう。
丁寧に木箱の蓋を閉め、正方形の付箋に「影乃楽へ」と書き、物置と化した部屋に置いた。
初めての依頼なのに依頼主に見せられない事が残念だった。何年も待ってもらったのに、影乃は静かにウタのお店を宣伝していた。
その後はウタの実力でお店を経営出来るようになり、影乃が宣伝をしていた事を知ったのは百人目の依頼人の噂から聞いた。
────演技中にマスクが壊れてしまって困っていた所に不思議な人に会ったわ
百人目の依頼人が困っている所に狐の面を着けた少年はひっそりと呟く。
────4区のマスク屋に君が気に入る仮面があるよ
百人目の依頼人は満足して帰った。
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水無月(プロフ) - 乾さん» 今更になってしまいますがありがとうございます!一時期題名が落ち着かない時がありましたが最後まで読んでいただきありがとうございました!! (2018年8月10日 23時) (レス) id: 07c7ef19ca (このIDを非表示/違反報告)
乾 - 完結おめでとうございます!!この作品は、名前が何度か変わっていましたがそんな連載当時から好きでした。素敵な作品をありがとうございました (2018年7月2日 18時) (レス) id: de2fb18392 (このIDを非表示/違反報告)
水無月(プロフ) - 瑠伊さん» ありがとうございます!素敵と言ってもらえてとても嬉しいです!! (2018年4月24日 19時) (レス) id: 07c7ef19ca (このIDを非表示/違反報告)
水無月(プロフ) - 慶さん» ありがとうございます!面白いと感じてもらえてとても嬉しいです!! (2018年4月24日 19時) (レス) id: 07c7ef19ca (このIDを非表示/違反報告)
水無月(プロフ) - 宮野 ミヤさん» ありがとうございます!気に入ってもらえとても嬉しいです!! (2018年4月24日 19時) (レス) id: 07c7ef19ca (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:水無月 | 作成日時:2017年12月27日 18時