#235〈覚悟〉 ページ45
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数十年後、コウらしい鮮やかな緑色の魂を迎え、あの女のお陰で擦り切れた両親の魂が元に戻る姿を確認し、宙に浮かせる。
「親父、おふくろ
・・・今度会ったら話そうぜ、運がありャ出会えるさ」
正直親なんてどう接すればいいのか分からない。だから俺はいつも通りの別れをする。
「さよなら」と別れを告げるのはこの世を去る奴らだけ。運があれば出会えると俺は信じている。
暖かい色の両親の魂は光の粒子となる。
(あー、俺にとってアンタらは何だったんだろうな)
俺がこの世に生まれるきっかけとなった二人の“喰種”。
弟のアイが生まれるきっかけとなり、俺は我が弟を喰った。
二人の“喰種”は俺になんて言うのだろうか。
《ブワリ》
とても大きな風が吹く。
強風なのに、地面の水が大きく揺れるほど大きな風なのに、とても優しくて、暖かくて、居心地良くて、真希以外の愛しいと思う感情が溢れる。
A、もう弟喰うなよ〜?
またね、A
二人の短く優しい声に俺は静かに涙を流す。
「ラクさま・・・」
「ラクちゃん・・・」
俺の後ろ姿を見ているだけなのに俺の“盾”は気付きやすい。めんどくさく便利な“盾”。
弱っていた弟の魂も宙に浮かし、ゆっくりと光の粒子となり上に流れる。
「いつか会おうぜ、俺の弟よ」
またな、クソ兄貴
そういえばアイツは俺を一度も兄を否定した事はなかった。
「今度は兄らしくするよ」
消える弟を追うように白い箱の住人たちも次々と光の粒子となる。
「・・・お前らも俺から逃げられるんだろ?」
赫子はあの女に使った時を最後に出なかった。別に危険な奴が来るわけでもなく、死のうがここの世界なら何度でも
気まぐれに人助けをした、気まぐれに遊んだ。槍はいつしか降ってこなくなった。
「ラクさん・・・いいや、A」
コブの決心した力強い声に振り返る。
「オレはアンタ以外下につくつもりはねェ
それに昔の名前なんて忘れちまった」
「Aさま、ボクは貴方以外に仕える気は御座いません
これからも“盾”として仕えます」
「Aちゃん、わたしあなたの絵を描きたいの
だから・・・これからもたくさんお話聞かせて」
三人の意思に俺は口角が上がる。
「そんな事言われちまったら、死んでもお前たちを縛っちまうぞ」
「覚悟してる」
「覚悟しております」
「覚悟してるよ」
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水無月(プロフ) - 乾さん» 今更になってしまいますがありがとうございます!一時期題名が落ち着かない時がありましたが最後まで読んでいただきありがとうございました!! (2018年8月10日 23時) (レス) id: 07c7ef19ca (このIDを非表示/違反報告)
乾 - 完結おめでとうございます!!この作品は、名前が何度か変わっていましたがそんな連載当時から好きでした。素敵な作品をありがとうございました (2018年7月2日 18時) (レス) id: de2fb18392 (このIDを非表示/違反報告)
水無月(プロフ) - 瑠伊さん» ありがとうございます!素敵と言ってもらえてとても嬉しいです!! (2018年4月24日 19時) (レス) id: 07c7ef19ca (このIDを非表示/違反報告)
水無月(プロフ) - 慶さん» ありがとうございます!面白いと感じてもらえてとても嬉しいです!! (2018年4月24日 19時) (レス) id: 07c7ef19ca (このIDを非表示/違反報告)
水無月(プロフ) - 宮野 ミヤさん» ありがとうございます!気に入ってもらえとても嬉しいです!! (2018年4月24日 19時) (レス) id: 07c7ef19ca (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:水無月 | 作成日時:2017年12月27日 18時