冒険の痕跡:7 ページ9
様子を見に行こうと部屋のドアを開けると、綺麗な銀髪と紅の瞳を持った少女は既に起きていた。
その顔は酷く青白く、此処へ運んできた時にはなかった汗を浮かべている。少し浅い呼吸を繰り返している。
──"お兄ちゃん"。
眠っている間、少女が何度も繰り返し呼んでいた言葉。苦しむように眉を寄せていたのを見た。
「あの、助けて下さりありがとうございます」
少女はそう言うと深々と身体を曲げた。
「いや、礼を言われるようなことじゃないが…お前大丈夫か。顔色がだいぶ悪いが」
「いえ、大丈夫です。少しだけ悪い夢を見てしまったようで」
気にしないで下さい、と少女は取り繕うように微笑んだ。
こんな子供が、強がるのか。
そう考えた後にそりゃそうか、と一人で納得する。
幼くたって、プライドはあるし、名前も素性もしれないやつに弱音なんか吐きたくないよな。
「まぁ、体調が万全になるまでここで休んでるといいさ。オレ達は急ぎの用があるからこれで──」
「ちょっとカミュ」
ドアの影からイレブンがジト目を向けながら顔を覗かせる。
「女の子を一人で放っておく気?」
つい何時間か前に出会ったばかりだが、こいつはどうやらどうしようもないお人好しらしい、というのは既に把握している。
「あのなぁイレブン。オレ達はゆっくりしてる暇は無いんだよ。急がないと、」
「分かってるよ。だけど放っておいたらこの子が可哀想」
…やっぱりなぁ。ダメ元で説得してみたけどこれはもう駄目だ。お人好しのくせして頑固者らしい。
知らねえぞ、と手を振りながら部屋を出ていきながら、少女が繰り返していた言葉を頭の中で反芻した。
「…お兄ちゃん、か」
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千織(プロフ) - チロル/CHIROLさん» チロルさん、初めまして!有難いコメント、とても嬉しいです…!これからも精進していくので、見守って頂けたらと思います! (2018年11月3日 7時) (レス) id: 43a89afe6e (このIDを非表示/違反報告)
チロル/CHIROL - はじめまして!ドラクエファンなので、ドラクエの夢小説を書く人がいるのか!と驚き拝見させていただきました!掴みにくい世界感を表現されていて千織さんはすごいと思いました!これからもがんばってください! (2018年11月2日 22時) (レス) id: f7aec74604 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:千織 | 作成日時:2018年10月29日 20時