冒険の傷痕:1 ページ3
勇者が現れるということは、この世界を脅かす悪が現れるということだ。
…世界を救う勇者との旅、か。
あのお告げが本当なのかは定かではないのだから今どうこう言える状況ではないのだが、まぁ嘘だった時はその時だ。
「…勇者、ね」
世界を救う存在、それはこの世界の光であり、物語の主人公的な存在だ。英雄とも呼ばれるその姿と、私は隣に肩を並べるだけの資格はあるのだろうか。
穢れに穢れたこの身体と、罪を背負った私に。
はたと足を止めて、空を仰ぎ見る。
視界いっぱいに広がる広大な蒼。その色はまるで私が救えなかった"あの人"の瞳のようで。
陽だまりは温かいのに、どうにもならない程に凍てついた目を向けられるような気がして、私はふるりと肩を揺らした。
分かっている。
赦されないのも、恨まれているのも、生きるべきは私ではなかったことも全て、
分かっているのだ。
"お兄ちゃん"じゃなくて、私が、
私が刺されていれば。
守れていれば。
「…っ」
つつ、と涙が頬を濡らす。
──ごめんなさい。
歪みそうになる顔を必死に抑えて前を向く。
泣いちゃだめだ。
大人になれ。幼くなるな。
自分を自分で律して背を正す。
弱音を吐くな、前を向け。決して後ろを振り向くな。
目をぎゅっと瞑り涙を振り払うと、私は王国へ続く道を再び歩み始めた。
──未来へと。
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千織(プロフ) - チロル/CHIROLさん» チロルさん、初めまして!有難いコメント、とても嬉しいです…!これからも精進していくので、見守って頂けたらと思います! (2018年11月3日 7時) (レス) id: 43a89afe6e (このIDを非表示/違反報告)
チロル/CHIROL - はじめまして!ドラクエファンなので、ドラクエの夢小説を書く人がいるのか!と驚き拝見させていただきました!掴みにくい世界感を表現されていて千織さんはすごいと思いました!これからもがんばってください! (2018年11月2日 22時) (レス) id: f7aec74604 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:千織 | 作成日時:2018年10月29日 20時