冒険の傷痕:11 ページ13
…仲間。
私は二人がいなくなり静かになった部屋でイレブンが言った言葉を反芻した。
長らく縁のなかったもの。
持ってはいけないと思ったもの。
何にも変え難く、
──守らなきゃいけないもの。
あの日のことが蘇る。
覚えている。何もかも、色鮮やかに。
それは鮮やかすぎるほど。
瞼の裏にこびりついて、こすってもこすっても落とせない。
…守ると誓ったんだ。
もう二度と失わないと。
「強くならなきゃ、」
コン、とドアをノックする音が響いた。
「入るぞ」
「どうぞ」
足を踏み入れたのは、カミュだった。
「粥作ったんだが、食欲はあるか?」
「おかゆ…」
作ってくれた。私のために。
カミュが持っている木製のお椀からは、白くて綺麗な湯気が立ち上っている。
ぐぅ、と情けない音がお腹の方から聞こえてくる。
「…」
「…食うか?」
「食べます…」
受け取ったお椀はほんのりと温かく、冷え切っていた手先をじわりと熱が通る。
スプーンを手に取って、程よく柔らかくなった白いご飯を口に運ぶ。
「…美味しい」
味付けは塩だけなのに、とても美味しく思える。…あぁそうか、今まで食べてきたのは道に落ちていた果物だったり、硬くなったパンだったり、味のない芋だったりしたからか、と納得したのはほんの数秒後。
こんなにも温かくて、柔らかくて、優しい食べ物は久しぶり…というか初めてかもしれない。
「…美味しい。…ありがとうございます、カミュさん」
「おう、喜んでもらえて何よりだぜ。…オレも敬語は無しでいいんだけどな」
カミュはそう言うと私の頭にぽん、と手を置いた。
「…!」
「…あ、わりい。嫌だったか?」
私が硬直したのを見て、嫌がられていると思ったのか、カミュはそう問うてきた。
「優しく触るんだなって、思っ、て」
…まるでお兄ちゃんみたい。
そう続く言葉を飲み込んだ。
私に伸びてくる手は、今まで酷く怖くて、痛くて、気持ち悪くて、だから、
貴方がそんなに優しく触れてくるなんて思っていなくて。
「懐かしいと、思って」
…お兄ちゃん。
私は今、上手く笑えていますか。
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千織(プロフ) - チロル/CHIROLさん» チロルさん、初めまして!有難いコメント、とても嬉しいです…!これからも精進していくので、見守って頂けたらと思います! (2018年11月3日 7時) (レス) id: 43a89afe6e (このIDを非表示/違反報告)
チロル/CHIROL - はじめまして!ドラクエファンなので、ドラクエの夢小説を書く人がいるのか!と驚き拝見させていただきました!掴みにくい世界感を表現されていて千織さんはすごいと思いました!これからもがんばってください! (2018年11月2日 22時) (レス) id: f7aec74604 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:千織 | 作成日時:2018年10月29日 20時