【原神】この鞠だけは解けやしない【鹿野院平蔵】

前譚 ページ1

今日の稲妻も非常に賑わっている。

人々は楽しげに時を過ごしているのだが、その中を一人の青年が走っていた。

向かう先は天領奉行。

青年はとある人物に呼び出されていた。



「お待たせ、平蔵！」

「お、やっと来たね相棒！」



頭に軽くリボン結びされた紐を揺らしながら、青年を相棒と呼んだ少年の名は鹿野院平蔵。

天領奉行で特別探偵として働いている。



「ごめん、実はパイモンが中々朝ご飯食べ終わらなくて。」

「おい、オイラのせいかよ！」

「ふふ、神の口は食べ物も吸い込んでしまうのかな？」

「だから、その妙な呼び方はやめろって！」



空を飛ぶ奇妙なパイモンという少女。

一緒にいる青年は、旅人の空。



「それじゃあ、早速甘味屋に行こうか。早く行って菓子折りを買わなきゃ約束の時間に間に合わない。」

「そうだね。」



実は、この後人と会う約束をしているのだ。

会う約束と言っても、平蔵の日課に旅人が着いて行くだけなのだが。



「さあ、今回の菓子折りは相棒が選んでいいよ！」

「冗談だよね。」

「本気さ。ほら、早くしなきゃ。」

「もう、平蔵ってば…じゃあ、これかな。」



甘味屋で旅人が手に取ったのは饅頭だった。

パイモンは「美味そうだな！」と大喜び。

すかさず旅人は「パイモンのじゃないからね。」と口を挟んだ。



「まあ、相手が良いよって言えば食べても大丈夫だから、あんまり落ち込まないでよ。」



苦笑いを浮かべながら会計を済ませた平蔵がやってくる。

これにはパイモンも笑みを浮かべた。

旅人は溜息と一緒に頭を抱える。



「じゃあ、早速行こうか。この時間ならもう居るはず。」



平蔵の言葉で二人はまた歩き出す。

稲妻の長い石段を下り、土を踏みしめ、脇道へと入っていく。

そこでは紅葉が良く咲いていた。



「綺麗だね。」

「うん。僕もお気に入りの場所だよ。まあ、見つけたのは僕じゃないんだけどね。」



暫く紅葉の道を進むと、少し開けた場所に出た。

石で出来た小さい机に椅子が四つ。

そのうちの一つには既に人が座っていた。



「やあ、お待たせ。」



笑顔で手を振る平蔵。

その後ろで慌てて会釈をする旅人。



「やあ、平蔵。随分と遅かったね。君が旅人だね。話は色んな人から聞かされてるよ。堅苦しいのは無しにしよう。さ、どうぞ座って。」



椅子に座るように促したのは、艶のある黒髪を揺らす女性だった。

言われた通り椅子に腰掛ける旅人。

それを見た平蔵も椅子に座った。

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