. ページ38
.
「北里准尉、おはようございます」
『ん…こんばんは……』
「いえ、朝です」
第七師団にはパーソナルスペースというものがないのだろうか
一人部屋のはずなのになんで私は月島軍曹に起こされているのだろう……
「おはようA、積丹へ行こうか」
爽やかな笑顔がやけに眩しい
月島に無理やり着替えさせられた私は
気がつけば鶴見中尉の寝泊まりしている宿の玄関にたっていた
だけど意識はすぐに途切れ、ぼんやりと2人の会話を聞くのだ
「准尉はまだ寝てます」
「構わん」
.
「A、起きたかい？」
今は何時だろう
ゆらゆら揺れて心地が良い
そんなフワフワとした意識は視界に飛び込んできた景色によって瞬時にして覚醒された
絵の具を零したかのような一面の青と
心地よく滑る波音
理解するのにそこまで時間はかからなかった
『海！？』
「潮の香りがするねえ」
なんで！？
いつの間に！？
下を見てヒュっと息を飲んだ
崖の上で、馬に跨ってる
味わったこともない高さに、言いようのない恐怖を感じた
腹に回った腕は、恐らく鶴見中尉のものだろう
「北里准尉には今日から囚人狩りに参加してもらう！」
元気よく鶴見中尉が言う
なんのこっちゃ
ここで言うか！？普通！？
断ったら崖から突き落とされそうな勢いだ
「よぉし、行こうか」
そう言って中尉はヒラリと降りる
私が降りるために、手を添える姿は英国紳士のようで、年頃の女子であれば一瞬で心を奪われてしまうような色気があった
「まずはご挨拶せねば、な」
なんて言われて付いて来たのはいいものの……
なんで中尉はピアノを弾いてるんだ？
無駄に上手いし…
「お上手ですな！鶴見さん！
その洋琴も喜ぶ！」
威勢のいいこのおじさんは誰なのだ
「ぜひ我々の平気工場建設に投資してください」
ポロン…と最後の音が無駄に広い部屋に響く
あ…なるほど
これは軍資金の…
そこまで分かったのはいいんだけど…
私これいる？
なんで連れてきたの？
今日非番だよね？
「武器は好きだ
見てくれ、軍から横流ししてもらったマキシム機関銃だ」
ドスン
「ほおいいですな」
良いですな、じゃなくてさ
おいおい朝っぱらから物騒なものを出すな
おじさんがグランドピアノからマシンガンを取り出したと同時に下の階からドォン、と銃声が響く
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 76人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ゴールデンカムイ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
芝(プロフ) - 鮭マヨさん» コメントありがとうございます。とても励みになります…(;_;)これからもどうぞよろしくお願いいたします。 (2021年9月13日 1時) (
レス) id: ac408ee6ee (このIDを非表示/違反報告)
鮭マヨ - この作品ほど更新が終わってほしく無いと思ったの初めてです…更新めっちゃ楽しみにしてます…！ (2021年9月11日 8時) (レス) id: 9536630108 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：芝 | 作成日時：2021年8月31日 2時
