【７月 橙】 ページ28
side 紫
『ちょっと出かけてきます』
そんなメッセージだけ残して、
康二がいなくなるのは、何回目だろうか。
人の目を気にしすぎてしまう康二は、
ときどき、疲れてしまうようで。
フラッと出かけたまま、 ２〜３日くらい
帰ってこなくなることがある。
詳しい行き先は誰も知らないんだけど、
あんまり人がいないところらしい。
帰ってくるまで、携帯の電源も切っているから、
こちらから連絡を取る手段はなくて。
"絶対に帰ってくる"という約束を信じて。
どこかで倒れたり、事故に遭ったりしないで、
無事に帰ってくることだけを祈って。
俺たちは、ただ待つことしかできない。
康二がいなくなって３日目。
そろそろ帰ってくる頃だと思って、
みんな、仕事中も、家の方を気にしていて。
お昼になっても、まだ帰ってきていなかったけど、
涼太は、康二の分もお昼ごはんを作っていた。
深澤「涼太、昼ごはん、多くない？」
宮館「うん、そろそろ帰ってきそうな気がして」
１人分だけ丁寧にラップが掛けられて、
テーブルの上に置かれたまま、午後の仕事に戻る。
それから、どのくらい時間が過ぎたのか。
ガチャン
家の玄関の方からした音に、
仕事の手を止めて、顔を見合わせる。
渡辺「康二、帰ってきたんじゃね？」
岩本「そうだな、ちょっと見てくる」
様子を見にいった照は、すぐに戻ってきた。
岩本「康二、帰ってきて、元気そうだった。
シャワー浴びて、飯食ったら、寝るって」
無事に帰ってきたことが分かって、
ホッとした雰囲気が漂う。
宮舘「じゃあ、ちょっと買い物行ってきていいかな？」
深澤「もちろん、よろしくね」
康二が帰ってきた日の晩ごはんは、
絶対に青椒肉絲って決まっている。
どうしてかと言うと、康二は青椒肉絲が食べたくなると
帰ってくるらしいからなんだよね。
だから、涼太はその材料を買いに行ったってわけ。
よし、心配事もひとつ減ったし、
美味しい晩ごはんも待っていることだし。
俺たちは、もうひと頑張りしましょうかね。
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作者名：アクモ | 作成日時：2023年2月1日 20時
