【８月 � � ページ29
side 黄
毎日毎日、暑い日が続いている。
事務所も、そんなに冷房が効いているわけじゃないし、
少し外に出ると、本当に溶けそうなくらい暑い。
佐久間「あーつーいー」
書類をジッと見て考えていた佐久間が、
とうとうオーバーヒートしたらしい。
岩本「"暑い"って言ったら、余計に暑くなるだろ」
佐久間「言わなくても、暑いもん」
席を立って、扇風機の前に陣取った佐久間。
深澤「でも、今年、ホントに暑いよな」
ふっかまで、佐久間の隣で扇風機に当たって、
他のみんなも、うちわや扇子を取り出した。
俺もうちわを持って、隣で赤い顔をしている
亮平に向かって、パタパタと風を送る。
佐久間「こんなに暑いと、仕事にならないよ」
うだうだ言ってる佐久間が、ふっかに寄りかかって、
『暑い！』と押し返されている。
佐久間「てかさ、みんな、夏休みはどこか行くの？」
佐久間が皆を見回して声をかける。
それぞれ、何か考えてはいるんだろうけど。
渡辺「俺は、涼太と地元に帰ろうと思ってて」
幼馴染みの２人は、実家も近いらしくて、
いつも夏休みは、一緒に帰っている。
岩本「俺も、実家には帰るけど。佐久間は？」
佐久間「えっとね、俺は、まず……」
聞いてほしそうにウズウズしているから、
仕方なく話を振ると、もう止まらない。
アニメのイベントだか、ライブだかの、
よく分からない話が延々と始まった。
岩本「分かった分かった、ラウールは？」
ラウ「うん、少しだけ、帰ってこようかな」
普段、実家から離れて暮らしているから、
夏と冬くらいは、実家に帰る人も多くて。
でも、亮平は事情があって実家に帰らないから、
黙って小さくなっている。
岩本「亮平は？どこか行きたいところとか、ないの？」
俺も分かってはいるけど、せっかくの夏休みだし、
実家じゃなくても、行きたいところがないかと思って。
阿部「うーん……」
まあ、毎年聞いているけど、『別にないかな』って
言われるし、今年もそうかなと思っていたら。
阿部「おばあちゃんち、行きたいなぁ」
思いがけない答えが返ってきた。
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作者名：アクモ | 作成日時：2023年2月1日 20時
