君のように。 ページ2
嗚呼、どうしてこうなったのか。いっそ拒絶してくれればどれ程楽だっただろう。もういっそほっといてくれたらこれ程に思いは強くならなかったというのに。君が私と話すから私は嬉しくなった。嬉しいと、思ってしまった。
もう戻れなくなってしまった。
『私はね、ずうっと君のようになりたかったんだよ』
俯くAから宇髄は表情をみることができない。今Aがどんな顔をしているか、宇髄は知らない。
それでも暗く重々しい声質から想像することぐらいはできた。そしてAがきっと今苦しそうに顔を歪めているであろうことは想像することもできた。だからこそ、宇髄は迷った。何て声をかけるか迷う宇髄にAは返事を求めなかった。宇髄に背を向け、Aは空笑いした。
『まあ、でもそれは君には関係のないことですからね。…さて、私はそろそろ帰らせてもらうよ』
背を向け歩くAを宇髄は引きとめるべきだ。だが、宇髄はそれができない。Aに手を伸ばすことが今の自分には到底できない。
「Aちゃん!!!」
叫ぶようにお隣さんは声をあげる。Aはその声に一瞬、ぴたりと止まり、そしてまた何事もなかったようにあるき出した。
『どうしましたか、お隣さん。あなたが声をあげるなんて珍しいですね』
何でもないように芝居がかった口調でAは言う。歩く足を止める気はないようだ。
「ねぇ……!!Aちゃん…Aちゃんは本当に人を殺したのぉ…?教えてよぉ……私は、何があっても、Aちゃんの、」
『そうだよ。お隣さん、私は何度も言ったでしょう。人殺しだと』
友だちだから。そう言おうとしたお隣さんをAは最後まで言わせないように、聞かないように言葉を重ねる。一瞬の沈黙。そして、お隣さんが口を開き、閉じる。その時、
「…………義勇。Aを暫くの間、家においてほしい」
声は、今までずっとAらの会話を聞いていたお館様からであった。義勇は突然提案されたことに驚き、一瞬目を見開いたが、直ぐに御衣、と膝をついたまま返事をした。そして返事をした刹那、義勇は風をきる速さでAを担ぎ失礼、と呟きそのまま屋敷の塀を飛び越える。
冨岡。一瞬後ろから声がしたが振り返る間もなく、義勇は自身の屋敷へと向かった。声は、宇髄からだった。だが今宇髄をAに会わせるわけにはいかない。そう思ったからこそ、お館様は命じたのだと義勇は思う。
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ひいらぎ・いろ - 小冬さん» ありがとうございます、いつも小説を書く度に面白いか凄い不安になって、、そう言ってもらえて凄く凄く励まされます!これからも頑張ります! (2021年5月2日 7時) (レス) id: 3d1bfbcbe7 (このIDを非表示/違反報告)
小冬 - とっっても、面白かったです!!もう、夢主の反応とかがめっちゃ面白くていつも思い出して笑っています!!これからも頑張って下さい!! (2021年5月1日 23時) (レス) id: b394ae1541 (このIDを非表示/違反報告)
ひいらぎ・いろ - S_t0606さん» コメントがきたことにはしゃぐ人間はこの世にはいます。(ありがとうございます!)なるほど、、確かに夢主よく宇髄さんといますから、、もしかしたら、、? (2020年11月29日 20時) (レス) id: 79b860e9e4 (このIDを非表示/違反報告)
S_t0606(プロフ) - 宇髄さん宇髄さん宇髄天元様で落ちお願いします (2020年11月29日 17時) (レス) id: 3664f0360e (このIDを非表示/違反報告)
ひいらぎ・いろ - 氷華さん» まさか続編にいけるとは、、(←亀更新人間)こちらこそ、よろしくお願いします! (2020年11月14日 21時) (レス) id: 79b860e9e4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ひいらぎ・いろ x他1人 | 作成日時:2020年11月13日 0時