十一 ページ13
【尾浜勘右衛門side】
(あわわわわわわわわ)
A先輩に抱擁されてしまった。
(なんかいい匂いしたなぁ……じゃなくてっ!!!)
尾浜「なんで先輩はそんなに平気そうな顔してるんですか!!」
『まあ、家でも兄上を抱き締めてあげたりしていますし……至って普通では?』
尾浜/鉢屋「普通じゃないですよ!!!」
鉢屋「抱擁とはそう簡単に手に入らないもの……簡単に手に入らないからこそ、手にした時により幸せになれるというものです」
尾浜「しかも兄上がいるなんて聞いてません!!」
そいつとんだシスコンじゃないですか!!!
『抱擁したいと言ったり、するなと言ったり、一体何なんです?』
尾浜「だから……A先輩から簡単にするのはどうかと思うんですよ!」
『わかりました。もう二度としません』
尾浜/鉢屋「そういうことではなくて!」
_____
【主side】
さっきから理不尽極まりないことを言われ続けている。
しかも三郎は関係ないだろう。何熱心に力説してるんだか。
『後輩達の前なんですから、これ以上醜態を晒すのはやめなさい』
私が真っ直ぐ睨みつけると、二人は一瞬にして口を閉じた。まるで蛇と蛙だな。
『いつも二人がすみませんね』
彦「いえいえ…」
庄「お二人が変人だということは、ここ数日一緒に過ごして分かってきていましたから」
後輩達は苦笑いを溢しながらそう言った。
この二人の方がよっぽど大人である。
『こんなことをいつまでも喋っていたらお茶が冷めてしまいますよ。私は先に頂きますからね』
私はお茶を啜って、庄左ヱ門がお茶菓子にと持ってきてくれた饅頭を口に含んだ。
(うん。きめ細かな舌触りで餡子もとても美味しい)
久しぶりの甘味だったからか、身体から疲れが抜けていく様な感じがする。
私が幸せに包まれていると、後輩二人が「あ!!」と大きな声で叫んだ。
『どうかしましたか?』
彦「先輩、今笑ってませんでしたか?!」
庄「A先輩が笑ってるところ初めて見ました」
『えっと……こうですか?』
私は口角を上げて見せたが、後輩達はそうじゃないと首を横に振った。
鉢屋「A先輩は甘味を食べている時にだけ、ごく稀に自然な笑顔になるんだ」
尾浜「いつもは全然笑わないし、笑っても下手な笑顔しかできないんだけどね」
庄「へー……貴重なものを見させていただきました」
『そんな大層なものじゃないですよ』
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ゆかり(プロフ) - あー、喜八郎と一緒に寝たい人生だった (12月24日 18時) (レス) @page16 id: c2f7bbb147 (このIDを非表示/違反報告)
黒糖さまでーす - 夢主さん最高 (2023年3月13日 19時) (レス) @page50 id: b07dd8e215 (このIDを非表示/違反報告)
ずんだ餅 - 面白かったです✨(*`▽´*) (2023年2月22日 0時) (レス) @page50 id: 12d02573a8 (このIDを非表示/違反報告)
勘ちゃんに食べられたいお菓子🍡 - 面白かった〜 (2023年2月15日 0時) (レス) @page50 id: 5ad601e96f (このIDを非表示/違反報告)
雪女 - お話良かったです、素敵な作品ありがとうございます。 (2022年7月29日 13時) (レス) @page50 id: 5834c2d9fa (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ホシ | 作成日時:2021年12月31日 3時