十七「予算会議準備」 ページ19
会計委員会にまんまと一杯食わされてから数日
ほとんど眠れていない。
もう丑の刻を回っているというのに、現在も会計委員会は活動を続けていた。
部屋では全員が正座しながら黙々と計算を続け、算盤を弾く音だけが延々と響いているという異様な光景である。
それもこれも全ては近々ある予算会議の所為なのだ。
私達は予算会議に間に合うように去年の支出を全て計算し、帳簿に記録しておかなければならない。
しかし、これ以上仕事を続けるのは流石にまずい。
一年生二人はさっきから動きが時々止まっているし、三年生の左門は目が血走っている。三木ヱ門も少々眠そうだ。
そして一番寝かせなければならないのは文次郎である。今日で少なくとも七徹はしている。
(これは何とか全員眠らせないと……)
ダンッ
いきなり大きな音がして私達は全員算盤を動かす手を止めた。
顔を上げると、目の前には突っ伏している団蔵がいた。
睡魔に抗えなくなって眠ってしまい、頭を机に打ったのだ。
(あの打った衝撃でも起きないなんて……)
後輩の限界を感じ取った私は話を切り出した。
『そろそろ皆眠った方がいいんじゃないですか?』
文「いや、まだ丑の刻だ」
『え?』
駄目だ。委員長は正気じゃない。
『“まだ”じゃなくて“もう”なんですよ。せめて下級生と三木ヱ門はちゃんと布団で寝かせてあげるべきです』
私は真っ直ぐ文次郎の目を見ながら訴えた。
文次郎は頭を掻いて悩んでいたが、最終的に「わかった」と、私の意見を聞き入れてくれた。
『左吉、団蔵を起こして一緒に長屋へ戻ってください。三木ヱ門は左門を部屋に送り届けたら、自室へ戻っていいですよ』
三木「いえ!私はまだ大丈夫ですので、左門を送ったら戻ってきます!!」
三木ヱ門はそう言ったが、全然大丈夫そうには見えない。うっすらとだが目の下には隈ができ始めてしまっている。
三木ヱ門を文次郎の様にするわけにはいかない。
『寝なさい三木ヱ門。明日倒れられたりしたらそっちの方が仕事に支障が出ます』
本当はただ三木ヱ門に眠って欲しいだけなのだが普通に言っても聞かないだろうと思い、あえていつもより厳しく返した。
三木「ああ……そうですね、わかりました。潮江委員長、A先輩、おやすみなさい」
文「おう」
『おやすみなさい』
そして、四人は部屋を出て行った。
___パチパチ
また部屋には算盤を弾く音だけが響き始めた。
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ゆかり(プロフ) - あー、喜八郎と一緒に寝たい人生だった (12月24日 18時) (レス) @page16 id: c2f7bbb147 (このIDを非表示/違反報告)
黒糖さまでーす - 夢主さん最高 (2023年3月13日 19時) (レス) @page50 id: b07dd8e215 (このIDを非表示/違反報告)
ずんだ餅 - 面白かったです✨(*`▽´*) (2023年2月22日 0時) (レス) @page50 id: 12d02573a8 (このIDを非表示/違反報告)
勘ちゃんに食べられたいお菓子🍡 - 面白かった〜 (2023年2月15日 0時) (レス) @page50 id: 5ad601e96f (このIDを非表示/違反報告)
雪女 - お話良かったです、素敵な作品ありがとうございます。 (2022年7月29日 13時) (レス) @page50 id: 5834c2d9fa (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ホシ | 作成日時:2021年12月31日 3時