十四 ページ16
私が目を覚ますと円状の空はもう朱色になっており、地上で生物委員会が私を探す声も聞こえなくなっていた。
(ああ、良かったこれで抜け出せる)
身体を起こそうとした時だった。
右腕に何か乗っている様な感覚
右に顔を向けるとすぐ横には喜八郎の寝顔があった。
(ああ、彼も疲れて寝てしまったのか)
私の腕を枕にする様にして気持ち良さそうに眠っている彼を無理矢理起こすのもなんとなくしのびなくて、私はその場を動けなかった。
仙蔵がきたところで喜八郎を起こして、寝ぼけてる隙に私が逃げればいいだけの話だ。
また彼の方に顔を傾けた。
(結構整った顔してるんだなぁ……まつ毛長い)
いつも泥まみれになっているのが勿体ないくらいだ。
まあ、穴掘りは彼の趣味だから私は止めるつもりはない。
その時、ゆっくりと喜八郎の瞼が開いた。
『おはようございます。喜八郎』
綾部「ん……ああ、先輩起きてたんですか。おはようございます」
その時彼は、ふふっと小さく微笑んだ。
(ああ、彼もこんなに自然に笑えるのか)
喜八郎は少し私に似ていると思っていた。
いつも仏頂面で、何を考えているのかわからない。
でも、彼は今綺麗な笑みを溢した。
それを見ると何処となく心地良い気持ちになった。
笑顔は、相手をこんな気持ちにさせられるのか。
私がそう考えていたその時、上から声が降ってきた。
「おい、迎えにきたぞ」
この声は間違いなく仙蔵のものである。
もう夕刻だ。私もそろそろ長屋に戻らなければならない。
このまま捕まったら、仙蔵のことだから書類にサインするまで帰してもらえないだろう。
(さて、どう逃げようか)
私が悩んでいると、喜八郎が起き上がって上にいる仙蔵に向かって言った。
綾部「立花先輩、申し訳ありません。やっぱりA先輩捕まえられませんでしたー」
耳を疑った。
彼の放った言葉がいまいち信じられなかったのだ。
そして彼は私に近づいてきて、上に聞こえない様な小さい声で囁いた。
綾部「今日は見逃してあげます。その代わり、またぼくに会いに来てください」
私が縦に首を振ると、喜八郎は鉤縄を取り出してそれを私に渡した。
(道具持ってないって言ってたのに)
彼はやっぱり、本当に何を考えているのかわからない。
喜八郎は仙蔵が垂らした縄で先に地上に上がり、私は二人がいなくなった後、鉤縄を使って外に出た。
(ありがとうって伝えそびれたなぁ)
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ゆかり(プロフ) - あー、喜八郎と一緒に寝たい人生だった (12月24日 18時) (レス) @page16 id: c2f7bbb147 (このIDを非表示/違反報告)
黒糖さまでーす - 夢主さん最高 (2023年3月13日 19時) (レス) @page50 id: b07dd8e215 (このIDを非表示/違反報告)
ずんだ餅 - 面白かったです✨(*`▽´*) (2023年2月22日 0時) (レス) @page50 id: 12d02573a8 (このIDを非表示/違反報告)
勘ちゃんに食べられたいお菓子🍡 - 面白かった〜 (2023年2月15日 0時) (レス) @page50 id: 5ad601e96f (このIDを非表示/違反報告)
雪女 - お話良かったです、素敵な作品ありがとうございます。 (2022年7月29日 13時) (レス) @page50 id: 5834c2d9fa (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ホシ | 作成日時:2021年12月31日 3時