4話 ページ5
「じゃあさ、Aはどんな人がタイプなんだ?」
「え、私?」
突然私へと話が振られてびっくりする。
好きなタイプ、か。
そういえば、考えたことがなかった。
そもそも今まで好きになった人が一人しかいないからその人が自分のタイプなのかもわからない。
「どうだろ。好きなタイプって言われたらわかんないんだけど、前に好きだった人は勉強も運動もできて優しくて…ってゆー完璧人間に見えるんだけど、実は機械に弱くて、流行りのものが嫌いで、誘えば来るけど家が好きだから外に出たがらなくて。
知っていくと面白い人だなって思ったんだ。
あ、でも1番好きだったのは…」
つい一年ほど前の話なのになんだかすごく遠い思い出のように思える。
失恋した時はあんなに辛かったのに、いまこうして語れているのはあの時口に出しこそしなかったが、シルクと一緒にバスケができていたからだろう。
「1番好きだったのは?」
「…私を、女の子扱いしてくれるとこ。
ほら、私って髪ショートだし口調も女の子っぽくないし、はっきりしたい性格だから他の男子から女の子扱いされることなくてさ。
けどその人は違った。重いもの運ぶ時とか、高い所で作業する時とか、私が転んだ時とか。
周りが誰も気づいてくれない中で、その人だけは『大丈夫?』って不意に声をかけてくれる。
そんなとこが、大好きだった。」
昔を懐かしみながら話す私のことを、シルクは真剣に聞いてくれた。
「本当に、好きだったんだな。そいつのこと。」
シルクの言葉に、私の心が軽くなる。
初めて、私の気持ちを他人に認めてもらえた。
その人のことを諦めた私の気持ちが嘘じゃなかったんだって証明してくれた。
「うん。好きだったさ、誰よりも。
…なんか、1人で語っちゃってごめんね!
そろそろ帰ろっか。シルクのこと、応援してるから!」
昔のことを思い出したせいで、センチメンタルになってしまった。
かつての甘酸っぱい思い出で感傷的になっているのを悟られないよう、私は公園を後にする。
夕暮れの空は、いつもより暗かった。
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www - 続きって書けますか? (2019年11月3日 14時) (レス) id: c017dbb3ff (このIDを非表示/違反報告)
www - なるかさん» でしょでしょ?!(笑) (2019年10月5日 21時) (レス) id: bb2f701b11 (このIDを非表示/違反報告)
なるか(プロフ) - wwwさん» これは、続き気になりますねー (2019年10月4日 22時) (レス) id: cc5fc6c73c (このIDを非表示/違反報告)
カレン(プロフ) - できたらで良いのですが、番外編のような形で今日の深イイ書いて欲しいです。お願いします。 (2019年9月30日 22時) (レス) id: b3e45f8b93 (このIDを非表示/違反報告)
www - 更新よろしく☆ (2019年9月29日 16時) (レス) id: bb2f701b11 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:來(らい) | 作成日時:2019年9月5日 0時