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「Aさん、お疲れ様です」
「お疲れ、ふぉい君も」
撮影終わりで濡れた髪のままやって来たふぉい君の頭にタオルをかける。
私を見る優しい瞳に、心臓の奥の方がキューッと締め付けられる。
見ていられなくて、視線を下に移した。
「っ!」
首元から滴る水が胸元を伝い、鍛え上げられた綺麗な腹筋の上を這っていく。
何とも言えない色っぽさに、脳みそが動きを止める。
凝視していることに気づき慌てて視線を横にずらした。
頭の中で何度も映像がリピートされ、目を逸らしたというのに全く意味がない。
「Aさん?」
ふぉい君の低い声が耳に届き、慌てて後ろを向いた。
片付け途中だった荷物を慌ててカバンの中に詰め込もうとするが、手元がうまく働かない。
カチャカチャと忙しなく音を立てる。
「Aさん」
「ひうっ」
耳元で名前を呼ばれ、おかしな奇声が出た。恥ずかしくて耳元が赤くなる。
ふぉい君の腕が腰に周り、そのまま後ろに引っ張られる。
先ほどの光景が、また頭をよぎる。
もしも漫画の世界だったら、ボンっと音が鳴っただろう。
それくらい顔が赤くなった。
「俺…」
どこか切なそうな声。
どうしたって逃れられない。
「まっ!待って!一旦ストップ!」
半ば強引に腕を解き、後ろを振り向き、ふぉい君の腕を元の位置に戻す。
気をつけのようなポーズにさせたまま、自分の視線は下に持っていく。
「私、この後予定あってさ!ほら、ふぉい君も皆と遊びたいやろ?!やけんさ、あのー…片付け…そう!片付けするけん、ごめん!」
何を言っているのか自分でもわからないまま、今までにないスピードで荷物を片付け、その場から逃げた。
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なる - 久しぶりに泣きました!こんなに良い作品を作ってもらってほんとに感謝です、、!ありがとうございます! (2023年1月27日 21時) (レス) @page33 id: 0a17aac8c4 (このIDを非表示/違反報告)
コットン - 毎日更新してくださりありがとうございます!次のお話も待ってるよ(о´∀`о) (2022年11月13日 9時) (レス) @page33 id: cdf631467a (このIDを非表示/違反報告)
サママリネ - めちゃ良かったです! 次のお話も楽しみにしてます✨ 更新頑張ってください❤️🔥 (2022年11月13日 8時) (レス) @page33 id: accb57b751 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:天ヶ崎音 | 作成日時:2022年10月30日 23時