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「この前はごめんなさい」
「ええよ。それより、大丈夫なん?やっぱり休んどった方が」
「大丈夫やから。心配せんでよ」
不服そうな顔をするしゅんちゃんを尻目に、メイクポーチに目線を戻す。
青いスパンコールの入ったポーチには、DJ社長の文字。
昔、みんなに無理言って入れてもらった世界に1つだけの私のグッズ。
随分と使い古して、その文字も今は薄れてきている。
「そのポーチ、まだ使っとるんね」
「やって、みんなから貰った大事なもんやもん」
「もうボロボロやん。捨てんの?」
「捨てんよ!まだ使えるもん」
捨てない、じゃなくて捨てれないんだけどね。
私は、この時間が好きだ。
メイクをするのが好きだ。
しゅんちゃんの顔を近くで見れるのが、触れるのが好きだ。
この時だけは、しゅんちゃんは私を見てくれて、私だけのしゅんちゃんだから。
なんて、こんな邪な気持ち持ってたらダメだよね。
「A、化粧上手くなったよな」
「え?なん、急に」
「いや、昔は塗りたくるだけやったやん」
「いっ、いつの話しとるん!めっちゃ子供の頃やろ、それ」
しゅんちゃんが言ってるのは、私が小学生くらいの頃だ。
ちょうど、私が化粧を知り始めた頃。
あの日の事は、今でも覚えている。
7歳になったばかりの頃、写真館で私は初めてメイクをしてもらった。
幼かったから、チークとリップだけの簡易的なものだったけど、当時の私には魔法のような時間だった。
鏡に映る自分が、まるで自分じゃないみたいで、お姉さんを魔法使いだと叫んだのは良い思い出。
そこから、お母さんや知り合いのお姉さんたちにメイクを教えてもらいながら、自分やしゅんちゃんを練習台にしていた。
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なる - 久しぶりに泣きました!こんなに良い作品を作ってもらってほんとに感謝です、、!ありがとうございます! (2023年1月27日 21時) (レス) @page33 id: 0a17aac8c4 (このIDを非表示/違反報告)
コットン - 毎日更新してくださりありがとうございます!次のお話も待ってるよ(о´∀`о) (2022年11月13日 9時) (レス) @page33 id: cdf631467a (このIDを非表示/違反報告)
サママリネ - めちゃ良かったです! 次のお話も楽しみにしてます✨ 更新頑張ってください❤️🔥 (2022年11月13日 8時) (レス) @page33 id: accb57b751 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:天ヶ崎音 | 作成日時:2022年10月30日 23時