海にトッピングされた光のお味は。(２) ページ4
川があって、橋があって、上で通学路が通ってるなら、例え河原でも最寄り公園を示す。
そんな似非公園は今日は随分遠慮がちな客入りらしい。ど真ん中で彼女は佇む。
「ふられたじゃんね？」
あ、今抜けてった魂、誰か捕まえて。
どうしよー、と呟く。
「好きだから、」
困るんだよな、と言葉にして。
はああ、と膝に頭を埋めた。
言わせてはくれるが言葉の後始末に世界はいつも無責任である。なのにどうしても言いたくなってしまうのはなぜだろう。
さらにズズズと沈み、膝で作った三角を小さくする。
その時ちょうど夕陽が地平線に差し掛かり、狙ったようにオレンジ色が川に入水した。河原に生きる木々が落とした葉を、夕方の風が攫う。散る赤、黄、茶に空気が彩られた。
この少女はそんな美しい秋の景色の中にいた。ぴったりとその景色の一部になっていた。人々は、どうしてか彼女にがっちりと、ピントを捕まえられたかのように彼女に目が行く。
彼女の腹蔵とはそっくりそのまま正反対の景色が広がっていた。
彼女の心など知らないとでも言うように。
まるで彼女がこの景色の一部となるためここに存在するかのように……いや、この景色を彼女のために誂えたような。
そこに存在するだけで、コミックのポストカードのようだ。見る誰もが彼女を含めた自然の芸術に、ほうと息を吐き出してしまうだろう。
きっと彼女の素がもう少し淑やかで、可憐な雰囲気なら、まさしく少女漫画の中の『愛しい彼を思い夕日の中佇む可愛いコ』だったのだが、彼女には景色に沿って感情を変えてやるような器用さも優しさも義理もなかったもので。
しばらくして、彼女はやっと顔を上げ、自分の前に広がる芸術を一瞬見つめた。彼女の
こんな時でも夕日は綺麗なんだなぁと自分の感受性を少し恨んで、でも少し自分の小ささに心が落ち着いて。
「……帰る」
ぐす、と鼻をすすって、さっきまで綺麗だった制服の袖で鼻のむず痒さを拭った。袖にはしょっぱい斑点がたくさんできてしまっていて、それを見てグッと奥歯を噛み締めた。私、美術の時間この袖を汚さないようにする為だけに全集中力使って挑んだんだけどなぁ。
「…………ちくしょう！ すきだ！ 好きなもんはしょうがねえって！」
「とうとう一人で叫び出したの」
うわあ、とか言ってくれちゃって。
殴っていい人間の気配がプンプンして来ましたね！！
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作者名：泡沫 | 作成日時：2018年7月21日 21時
