僕は俺は私はあなたと

スピードワゴンといっしょ ページ7

悪臭漂う貧民街、喰屍鬼街。その一角の小さな小屋に俺は住んでいる。

「はぁ...」

ため息を吐いて、机の上のものを見た。それは、金。俺の悩みの種だ。

別に少なくて困ってるとかではない。
何ならその逆で、お前本当に貧民街の住人か？と疑われる程にはある。

当然だ。なんせ俺が寝る間も惜しんで働いた7年間の結晶なのだから。
ただ、問題、というか難点がひとつ。

そもそも何故金を貯めてるのかというと、このクソみたいな街を出て広い世界で旅をするためだ。
旅をしたいと考えた当時6歳の俺は10年で資金を貯める計画を立てた、が。

この計画だと、俺の身がもたない。

そう気付いたのは驚くことに7年後の最近だった。

なんということだ。
この街を出たいというのに、最短の道は断たれてしまった。
ならいっそちょっと足りなくてもいいから出てしまうか。
このままコツコツ貯めるか。

齢13歳にして俺は運命の決断を迫られた。
どうするべきか悩んでいると、コンコン、とボロい扉が叩かれた。
来客だ。俺が出て行く前に扉は開かれた。

なんだ、強盗か？そう思い身構えたが、そんな考えは払拭された。

「よっ！」

そう片手を上げてニカッと笑ったそいつはスピードワゴン。俺の親友だ。

世話焼きなやつで、よく様子を見にやって来る。
聞けば、俺はいつか倒れそうなんだと。
...まぁつい最近までそのうち倒れる生活してたんだから間違ってはいないな。

「で、なんか用か？」

「おう、話があるんだ。なぁA、俺と一緒に旅に出ようぜ！」

「...は？」

こいつ、もしかして俺が今悩んでること知ってて言ってんのか？
そうじゃなかったらある意味才能だな。
無計画でそんな話持ち掛けて来たならしばくぞ。

「なんでそうなった？」

「お前昔っから旅に出たいって言ってただろ？俺も結構金貯まったからよォ。そろそろ行けるかと思って」

やだ...俺のため...！？じゃなくて今こいつなんて言った？

「金、貯めたのか？」

「ああ！貯めたぜ！だから行こう！二人で！」

「お前はいつも突然だな」

「悪かったな！で？行くんだろ？」

「...あぁ、行くよ」

「よっしゃ！」

意思を示した俺に大袈裟に喜ぶスピードワゴン。
これからこいつと二人旅か。
...悪くねぇな。

それから俺たちはこれからの旅に想いを馳せて、会話を弾ませるのだった。

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