僕は俺は私はあなたと

〃 ページ12

気が付いたら知らない家で寝ていた。
な...何を言っているのかわからねーと思うが(ry

あの後、確か言われるがまま着いていったのだったか。
知らない人に着いて行くなとは言うが、野宿よりましだ。

そういえば移動するとき空を飛んでたのでやはり人外だろう。

さて、今僕は何をするべきか。人外の発言の意図が僕には分からない。
一から十まで説明してほしいのだが...肝心の人外はどこだ。

キョロキョロと周りを見るも、無駄に豪華な棺桶(？)があるだけ。
...少しなら覗いてもいいよな。

そう盛大にフラグを立て、ドアを細く開けた。

話し声が聞こえた。誰かと話しているということは、一人暮らしじゃないのか？
遠くて話の内容は分からないが、声のトーンからしていい雰囲気では無さそうだ。

もっとよく聞こうと身を乗り出した、その時。

「何をしている」

背後から身動きが取れなくなるほど重たい声がした。
圧迫されるような威圧感に体を包み込まれる。
さっきまで誰もいなかった。絶対にだ。なのに何故背後にいる？
背中に嫌な汗が流れて気持ち悪い。ああ、とにかく何か言わないと。

「...様子を見ようと」

「お前のような小童の行動を、一体誰が許可した？」

「僕、は」

何か言い返したかった。
けれど浮かんだ言葉はもつれてそのまま鎖となり僕を縛り付ける。

「...ごめんなさい」

結局はこんな言葉しか発せない。
もはや習慣になったその言葉は何の重みも持たずぽろりと零れた。

はあ、と嘆息が漏れる。僕からではない。声の主は目の前の男だった。
男は眉をつり上げ口をへの字にし、いかにも不機嫌そうだ。

呆れられた。きっと次の瞬間にはつまみ出され、落胆の表情を僕に向けるのだ。

「そのような様では先が思いやられる。このDIOと暮らすのだ、少しは気概を持て」

彼の形のいい唇から紡がれた言葉に驚愕した。

「でぃおさん」

「ああ、まだ名乗っていなかったか。いかにも私はDIO。貴様の名は何だ」

「僕、はA、です」

「何にそこまで戸惑っている？」

「え、あ。えと、僕、一緒に住むんですか」

「愚問だな。それ以外に無かろう」

心が揺さぶられた。
そんなに力強く肯定されたら、さっきまで警戒してた僕が馬鹿みたいじゃないか。

「...ありがとうございます」

絞り出した言葉はきっと小さすぎて聞こえていない。
でも、これから少しずつ関係を作っていくのだ。
お礼はいつかのその日にとっておいてもいいだろう。

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