さしす組が溺愛してます

あなたとの媒体 ページ32

｢ゲホッ……。｣



｢なんで術式使わないんだよ。使えない理由でもあるのか？｣









Aが自身の術式を使えないことを知っているであろう伏黒甚爾は、何度もそれを聞く。



抵抗することも出来ずただ斬られては治しを繰り返すA。



すると突然意を決したかのように彼女は膝をつき座り込む。









｢なんだ、術式使うのか。｣



｢宿儺様…宿儺様、｣









彼女の術式は、宿儺との縛りの元に宿儺の術式を自身の身体に降ろすことが出来る。



その強すぎる術式は、代償が大きく自我を保っていられなくなることもある。



強い力を求めれば戻るほど、宿儺の呪力に耐えられなくなり自我が保てなくなる。それを彼女は理解しているのだ。



だがそんな彼女が今、呪われた術式を使おうとしている。









｢宿儺様、お力を貸してください。宿儺様…。｣




｢ハッ、使わなすぎて感覚鈍ってんじゃねーか。｣




｢っ…！！｣









下ろしている最中に身体を蹴飛ばされたAの瞳からは、大粒の涙がポロリと落ちる。









｢なんで、悟を殺したの…。｣



｢あ？邪魔だったからだな。｣









゛五条悟゛の死、それは彼女にとってとても辛いものだった。









｢そうかお前、まだ9だっけか。そりゃ辛いよな。｣









その瞬間、必死に涙を堪え、術式を使おうとする彼女の小さな背中を誰かが包み込んだ。

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