第15話 ページ15
瞬きをして開いた時、目の前に男はいなかった。目線をズラすと一発で殴り飛ばされてる。意識もなさそうだ。
「オイ、誰に触ってんだぁ・・・?ソイツは傷つけるどころか、気安く触れていい女じゃねェよ」
鬼のように見えたのは顔に影を落とした蘭ちゃん。表情が消えてる。ケンカする時は、笑って殴るような蘭ちゃんが・・・これは本気でキレてる。
聞いた事のある嫌な音、男の断末魔のような叫びも聞こえてくる。見ると見張りの男は骨をいとも簡単に折られていた。
まるで木の枝でも折るかのような竜くん。手をはたくと足で踏みつけながら見下ろしている。
「ここいらの奴は知ってるはずだぜ?Aに手ェ出せばどうなるかって事ぐらい」
私の身体を押さえる男の手が震えてる。逃げるに逃げれない、恐怖で動けないんだろう。同情すら感じないけど。
蘭ちゃんの拳が頭上を一瞬にして通ると壁に激しくぶつかる音。身体が動かないせいで見えないが、飛ばされたんだろう。
「A」
蘭ちゃんの手が腰に通されると上半身を起こすように抱き上げられ、竜くんが後ろから上着を掛けてくれる。
「蘭ちゃん、竜くん・・・どうして」
視界いっぱいに映る蘭ちゃんと竜くん。安心からか、強ばっていた身体の力が抜けた。
「Aのあとつけてマンションに入る連中を見た奴がいてな。オレ達に連絡が入ったんだ」
アイツらがここまで入れた理由がよくわかった。家に着いて安心しきってた。私の油断が招いた事ね。
「ケンカもできねぇオマエが、よくここまで耐えたな」
竜くんが褒めてくれてる。それが珍しくて目尻を下げると小さく笑った。
「竜くんから・・・教えてもらった護身術、役に立ったんだよ」
「そっか」と優しい声、頭をクシャッと撫でられると小さく微笑みながら目を軽く閉じる。
蘭ちゃんに全体重をかけて顔を埋めていると静かに呼吸を繰り返しながら、薄らと目を開けた。
普段は自分の方がベッタリなクセして、私がくっつけば気分によっては「何?」「邪魔」とか悪口のオンパレードなのに。
何も言わない・・・蘭ちゃん、いつもより優しいや。
「A、その腕どうした」
「あぁ、ちょっと踏まれて・・・。痛くて、動かせないの」
腕を庇っていたのを察したのか蘭ちゃんの鋭い視線が刺さり、その言葉で腕に目を向けた竜くんは顔に影を落とした。
「ふざけやがって。アイツら、何やってくれてんだ・・・?Aの骨折りやがったッ」
「へぇ・・・なるほど」
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