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*
最近体が可笑しい。
「…ただいま」
家のドアを開けると投げつけられるガラスの食器。
壁に当たったソレは粉々になり、私の体に降りかかった。
…痛くない。
母さんは此方を見ずに食器を投げたのか、リビングのテーブルに顔を伏せていた。
「……あ、」
彼女の手元に置いてある錠剤に目を止める。
また増えてる…。
何も見なかったことにして、自室に閉じ籠る。
制服の袖を捲りあげ、腕を出す。
数日前までそこにあった筈の痛々しい痣は、綺麗に消えていた。
昨日も殴られたはずなのに。
そのとき、何故か、全く痛みを感じていなかったのだが。
「…やっぱり、」
体が可笑しいと感じていたのは、間違いではなかった。
*
先程掛かってきた電話。
相手は警察署だった。
内容は、
「……え、もう一回…お願いします」
「ですから…貴方の御父様が轢かれた被害者の御夫婦が息を引き取ったんです」
突然のことだった。
助かる見込みはある、そう聞いていた筈なのに。
電話を切って、母さんにそのことを報告しようと声をかける。
「…母さん、相手の御夫婦が息を引き取ったって」
「……」
「その御夫婦の娘さん…まだ小学生だったから、親戚の家に引き取られたって」
母さんは心底どうでもよさそうな顔をして聞いていた。
彼女のぼんやりとしたビー玉のような双眸が、宙を見つめる。
開いた口が閉じることはなかった。
お願いだから、
「…いつもみたいに殴ってよ、」
私の体に、一生消えない傷が欲しい。
母さんは、それさえも聞いていなかったかのように、錠剤を握り締めたまま、死んでいた。
原因は、クスリの乱用だった。
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黒子の葉っぱさん。(プロフ) - エンドさん» コメント有り難うございます。幻想的、ですか…。そういったものを意識していたので伝わっていたら幸いです。 はい、更新頑張ります(笑) (2016年4月29日 18時) (レス) id: f604d25ff8 (このIDを非表示/違反報告)
エンド - 幻想的な世界観に引き込まれました。夢主が帝光中に行ってしまいましたが、一体どうなるのでしょうか…。続きが楽しみです。更新頑張ってください。 (2016年4月29日 12時) (レス) id: 21f9618b4e (このIDを非表示/違反報告)
黒子の葉っぱさん。(プロフ) - リアンさん» 有り難うございます。私も個人的に好きなんですよね、人外と人間の恋愛。好き嫌いが別れると思うので不安でしたが…。まだまだ山場は遠そうですが頑張ります(笑) (2016年3月25日 22時) (レス) id: f604d25ff8 (このIDを非表示/違反報告)
リアン - 前作読ませて頂きました。今回も面白かったです!こういうお話が大好物なので(笑)更新頑張って下さい! (2016年3月25日 22時) (携帯から) (レス) id: 8d346a5b55 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:黒子の葉っぱさん。 | 作成日時:2016年3月21日 12時