Fantasia 第1楽章《S.S》 (ページ15)

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実は、誕生日に翔くんと一緒に過ごせること、初めてのお酒を翔くんと一緒に飲めること、こっそり一人で喜んでた。

誕生日なんて言うつもりなかった。

だって、1ヶ月後には終わってしまう関係なんだから。

一年に一度の誕生日でも、翔くんと過ごせるのは一生に一度だけ。

来年は、とか、来年も、とか言われたら、私はきっと耐えられない。

だから、一人でこっそり喜んでたのに。

翔「ほら、ロウソク消して」

「ふぅーーーっ」

翔「おめでとう」

悔しいけど、すっごく嬉しい。

心にずどーんと響くような、重たい幸せ。

「ありがとう」

「………一生、忘れない」

1ヶ月後、翔くんは全て忘れても。

私は、この二十歳の誕生日を、翔くんと過ごした日々を、決して忘れない。

一生、忘れない。

翔「Aちゃん……？」

「はい」

翔くんの声で我に返った。

翔「あ、戻った」

「何がですか？」

翔「いや、何でもない。食べよ」

「はい！いただきます！」

ちょっと深刻な顔しすぎたかな。

これからは、翔くんといる間ぐらい、余計なことは考えずに楽しく過ごそう。

1ヶ月後のことなら、そのうち考えればいい。

今を大切に生きなきゃ。

1ヶ月なんてすぐ過ぎちゃうんだから。