語り手さん【マギ】

【とある赤い目持ちの娘のハナシ】 ページ41

『遠い、遠い、セカイのハナシ。みんなが知らない、ヒミツのハナシ』

『あるところに娘がいた。
娘はお金持ちの家に生まれた。
温かな両親と使用人達に見守られて、すくすく育った娘だったが、叔父により両親は殺害され、家と共にその身を業火に焼かれた。
しかし娘は生き返った。
心臓を失った娘の命の代わりは、その瞳に宿った蛇だった。
蛇の持つ不思議な能力を手にした娘は叔父に復讐を誓い、見事、それを果たした。

娘にはまだやるべきことがあった。
娘と同じく能力を持つ少年少女達を、あるべき未来に導くこと。
仲間と過ごす日々の中で、娘は何者かによって意図的に8月の時間が、世界が繰り返されていることに気がついてしまった。
世界が繰り返される度に、仲間が酷い最期を迎えることも、知ってしまった。

そこに、どうしてか巻き込まれた大切な人も、同じ未来を辿ってしまうことを理解してしまった。

道理から外れた、いわゆる神にすがった娘は仲間を救うため、己を代償に、絶大な力を得た。

まるで魔法の力。

娘の計画通りに事は運んだ。
仲間の死を回避し、大切な人も守られた。首謀者が葬られたことにより、終わりのない日々は無事に明日を迎えることができた。
娘、1人を除いて。

命の代わりであった蛇の存在を抹消することで、絶命するはずだった仲間達に新たな命を吹き込み、生き長らえさせた。
"ある起点から繰り返す"という設定をぶち壊し、正常に戻した。
巻き込まれたイレギュラー、大切な想い人を守り抜き、あるべき未来に向かって背を押した。


娘は人の道理を外れてしまっていた。



"皆でずっと一緒にいる"
"あの子にお礼をして、たくさん笑っていける日々を"


人外の力は娘の願いを叶えたが、仲間の願いは叶えなかった。

神と契約したこと、命を救ったこと、事情が事情とはいえ仮にも世界を抹消したこと。
いろいろな理由がぐちゃぐちゃになって、娘は人ではなくなった。

人外になった娘はセカイから追放を受けた。
仲間達を救えた娘は、それはそれは朗らかに笑っていたそうな。

いったい、娘の行き先はどこだろう』

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