封印されてた魔導師【マギ】

第５夜 ページ7

むかーしむかーし




……でもないかもしれない。

けれど昔話。





ある王国の郊外にとても仲のよい家族が暮らしていました。




優しい父、おちゃめな母、家族思いの兄、少女はそんな家族が大好きでした。









幸せとは絶望と常に隣合わせ。


そんなこと、誰が言ったのでしょうか。
いつか聞いたその言葉を、少女はずっとずっと信じていませんでした。



もう何十年も平和な王国に、突如、火の粉が降り注いだのです。

それは隣国による奇襲でした。
長らく友好を築いた国でしたが王様が代わってからというものの、
両国はにらみ合いを続けていました。

隣国の王様はしびれを切らし、この地を戦火で燃やしたのです。


国軍だった父は国を守る為に、


兄は敵に抵抗して、


母は少女を庇って。





ひとりぼっちになった少女は、黒く、黒く、染まりました。
敵を恨み、王を恨み、運命を恨み………。

ﾋﾞｨﾋﾞｨﾋﾞｨ

けたたましく、黒ルフは鳴きます。

そんな少女のところに、敵の兵がやってきました。
この国の人は皆殺しにせよとの隣国の王様の命令だそうです。


「ごめんな、嬢ちゃん。」


静かに敵兵は
剣を降り下ろそうとしました。


「…………………………？」


不思議に思った敵兵は、そっと目を開けました。
少女を光輝く丸いものが守っています。

ガキン！ ガキン！！

なんどやってもそれは割れません。
むしろ強度を増しています。


「クソッ！………………！？」



気づけば少女は敵兵に木の棒を向けていました。
なんの変鉄もない、ただの棒を。


「私に謝らないでよ。皆を帰して？」


少女の声は不思議と頭に響いていきます。


「フラッシュ」


敵兵は跡形もなく、消えてしまいました。

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