封印されてた魔導師【マギ】

第２９夜 ページ33

Aside

結局自分は、理屈を並べて逃げたに過ぎない。
過去の自分を思い返してはそう思う。


とにかく、今の主は白雄様だ。
この身が朽ち果てようと、この方を守り抜こう。

今はそれだけを考えていればいい。



『貴方の望むままに。私は貴方に仕えましょう。』

「よろしく頼む」

小さく笑って、白雄様はそう言った。





『では、失礼します』

ガチャン


部屋を出て広い廊下を歩く。
大量の書物を持って移動する人がいた。

……今にも落ちてしまいそうですね。


『あの……手伝います』
「……あぁ、すみません」

書物の山から顔を覗かせたのは、紅明様だった。

『！？』

驚きのあまり、落としそうになってしまった書物を慌てて持ち直す。

……文官さんだと思っていました………………。


『この書物は？』

「兄上から頼まれたものです。……また籠って歴史書を漁っているようなんです」

歴史書、というと紅炎様のことだろう。

……歴史好きは相変わらずのようですね。


『…………体調を崩されてないといいのですが』

「どうでしょう。あの人は寝る間も惜しんで没頭しますから」

それを言ったら紅明様もですけどね。

そう言いたいのを堪えて、苦笑いを浮かべた。
軍記が好きなこの方も、寝る間も惜しんで没頭する。

似た者同士ですよね、紅炎様と紅明様って。



ちょうど中庭の辺りに差し掛かった時、
誰かの声が聞こえた。

「あっ！Aだ！明兄も一緒じゃん。どうしたの？」

そこへ現れた紅覇様。
白龍様もご一緒らしい。

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