元、小鳥遊事務所の専属カメラマン。 (ページ4)

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Σ(ノд<) ページ4

天side

『……え』

直ぐ近くで琴葉の戸惑ったような声が聞こえた。顔を首に埋めているから、この火照った情けない顔を彼女の目にさらすことはないだろう、とそうやって自分を落ち着かせる。
……まぁ、できてないからまだ埋めたままなんだけど。

ホントは、まだ言うつもりはなかった。

あんなのがあった後だし、なによりボクはこの気持ちをただ１人に差し出すことが許されない職業についてる。
自分でも"恋人はファンのみんな"って言ってるし、実際、それは変わらないものだと思ってた。

琴葉、キミを好きになるまで。

息を吸う。
キミに想いを伝える為に。

「被写体と向き合って仕事をこなす姿

基本紳士で人に好かれるところ

嘘をついたとき、わかりやすく反応するところ

意外とドキドキワクワクすることが好きで、やんちゃなところ

芯が通っていて、自分の意思を曲げないところ

からかうとどう切り返すべきか悩んでいる顔

わたわたすると慌ててドジ踏むところ

甘いものを食べているときの幸せそうな顔

陸たちやみんなを大切に思ってる瞳

花が咲く、よりかは快晴の空みたいな笑顔

多分、誰であってもキミは自分を犠牲にしてまで守るんだろうね、そこも好きだけどそんなムチャはしないでほしいな」

『ぁぇ…………あの、九条さん……？』

また耳元で声がする。
くすぐったい感じと、照れくさい感じがした。

琴葉、……恥ずかしがってる。
かわいい顔してるんだろうな、きっと。

「まだあるけど」

『まだあるんですか！？』

もうこれ以上は私のSAN値が持たないです
なんて続けるから、しょうがないから完結に言ってあげる。

恋人はファン。
それはボクの中でずっと変わらない。

でも、

「１回しか言わないからよく聞いてね」

顔を上げて、琴葉の背にまわした腕をそっとほどくと、琴葉もまたボクにまわした腕をほどいた。

離れる熱が寂しい。
もっとずっと、抱き締めていたい。

琴葉の目を見つめる。
重なった視線、彼女の夜空を切り取ったような深い藍に、ボクが映る。

「キミをずっと愛すから、
ボクの隣をずっと一緒に歩いてくれませんか」

想いを留めておくことなんてできない。
隠して隠して、奥底に大事に閉まったって、溢れて飛び散って誰かにバレてしまうかもしれない。
いつかの歌だか詩かに、キミを想わない日々はないなんてあった。
……まったくその通りだ。

あぁ、愛ってなんて苦しい。