元、小鳥遊事務所の専属カメラマン。 (ページ1)

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琴葉side

あれから1ヶ月。
水樹家から出た後はめまぐるしく日々が過ぎて行った。

まず水樹家の会社はウチ……波川家の傘下に入った。方針を変えて、取り扱う商品も変えて、再スタートをきるらしい。
急な事だったからマスコミも反応していた。
行われた記者会見で私と水樹弘貴との婚約のことにも触れられたけど、彼の兄はキッパリと否定した。九条さんが言ってた通り、きっとモモさんやユキさんが根回ししたんだろうな。

その水樹弘貴は会社の幹部を降りて、なぜか弥生兄上が連れ帰ってきた。
あんなことがあったからかな、門下生や弟＿＿宏紀が目をつり上げて騒いだもんだから兄上が理由を話したんだけど、どうもそれが、ね？

「理由？……うーん、棄て駒にするためかな？」

『えっ』

「………………………………冗談だよ？」

『兄上、その間はなんですか』

「大丈夫大丈夫」

『兄上……』

今はその弥生兄上から教育を施されつつ、厳重に地下牢で生活している。
まぁ、教育という名の洗脳だろうけど。

あとはイギリスで出されていた婚姻届も白紙になった。私は結婚していないことになったらしい。この辺は波川家の圧とスペックの高さを感じる。
「芸を魅せに方々に行くことがあるからそこでコネを作るのがコツだよ」と弥生兄上が笑顔でいった。
イギリス政府の上役でも相手にしたのだろうか。
我が兄ながら恐怖を感じる。

ついでに建てられていた新居も手に入れたらしい。新居に関しては詳細を聞いてただただ呆然とした。
なんかもう、あの、私の好みを盛り込んでた。
アンティークの家具、分野ごとに振り分けられた趣味部屋、(なんとこれが書庫、ゲーム、カメラの手入れ、作品展示室なんてものまである)大きな噴水を囲むように造られた美しい西洋風の庭園。
もうびっくりした。
水樹家は波川家の傘下に入ったから、水樹家の持ち物は波川家の所有物。
てな感じでその家も自由に使っていいよ、と言われた。別荘扱いだ。

そんなわけで水樹家のことは片付いた。
あの後、ヘリで本家に戻ったら姉さんが瞳に涙を滲ませていたからただいま、と言えば、姉さんは私に抱きついておかえり、と言った。
なんだかそれだけで全身の力が抜けてしまって、気がついたら姉さんと同じ布団の中だったのは。

嬉しかった。
久々の温もりが心地よくて、幼い頃に戻ったみたいで。