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三十八話 ページ41







ほとんど変化のない景色の廊下を歩き続け、クザンさんはやっと足を止める。


何処に着いたのだろうと目の前の扉を見上げると、そこには‘‘医務室’’と書かれているプレートがかけてある。そういえば、船が出港する直前に怪我を見て貰えと言われた気がする。

あの時は脱走するのに精一杯であまり話を聞いていなかった。


次からは人の話を聞くようにしよう、と思ったところ、クザンさんがドアノブに手をかけて扉を開く。瞬間、医務室特有の薬品の匂いがつんと鼻を刺激する。



「爺さん、子供を拾ったんだが怪我してるみてぇだからちょっと見てくれ。……こら、隠れるな」



‘‘爺さん’’とよばれた人がここの船医――いや、海賊船じゃないのだからそれは違うか、医者なのだろう。

何やら書類に目を通していたようだけど、クザンさんに呼びかけられると「やぁクザン」と挨拶をし、椅子から降りてしゃがむことで私と目線を合わせようとする。


けど、さっきもそうだったけれど、いくら人慣れしていても身内から引き離されて知らない場所で知らない人に囲まれている状態はかなり堪える。

加えて、私は海賊船に乗っていたのだ。[[rb:海賊の敵>海軍側の人間]]に私の素性がバレればどうなるか…自明の理だ。


咄嗟に私はクザンさんの後ろに隠れ、その長い足にしがみつく。

そんな私の様子を見てクザンさんが私を引き剥がそうとする一方で、医者のお爺さんは「おやおや」と怒る様子も無くにこりと笑って椅子に座り直した。



「驚かせちゃったかな。すまないねぇお嬢ちゃん」

「あ、いや……別に……」



お爺さんに敵意が無いのは分かっている――もちろん海軍なので当然なのだが。寧ろ敵意に近い感覚を覚えているのは私の方で、少し申し訳ないと思ってしまう。

お爺さんに謝罪し、おずおずとクザンさんの足から離れて用意された椅子に座る。



「それじゃあ今から幾つか質問するから答えてね」

「…うん」

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マシロ_mashiro(プロフ) - 太陽さん» コメントありがとうございますm(*_ _)m 大学生活も落ち着いてきたのでまた書き始めました。ゆっくりではありますが更新頑張ります! (4月12日 9時) (レス) id: 664df39994 (このIDを非表示/違反報告)
マシロ_mashiro(プロフ) - ぴよラムネさん» コメントありがとうございます!こちら白ひげ海賊団ルートとはまた一味違った海軍ルートとなっております。なるべく早く更新出来るよう頑張ります! (4月12日 9時) (レス) id: 664df39994 (このIDを非表示/違反報告)
ぴよラムネ(プロフ) - コメント失礼しますー!私を見て欲しかったを読みたくなって探してたらこの作品に出会いました!!別ルートがあったなんて…!更新頑張ってください!続き楽しみにしてます!! (4月12日 0時) (レス) id: 4c4725f70b (このIDを非表示/違反報告)
太陽(プロフ) - 更新されてる!!めっちゃ待ってました(●´ω`●)更新がんばってください! (4月12日 0時) (レス) @page36 id: 18ff82607c (このIDを非表示/違反報告)
マシロ_mashiro(プロフ) - シアナさん» コメントありがとうございます!大変お待たせしてしまってすみません。ストックが少ないので前より更新ペースは落ちますが、これからも本作品をよろしくお願いします(*´▽`*) (4月11日 21時) (レス) id: 664df39994 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:マシロ_mashiro | 作者ホームページ:http:  
作成日時:2023年9月3日 16時

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