十話 ページ12
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二人の事を考えると、頭がズキンズキンと痛む。外からは相変わらずウタの何処か幼さを残した、でも聞いた人を虜にする歌声が未だに耳に入ってくる。私にも音楽の才能があればシャンクス達に認められたのかな…私だけの役目があったのかな。
「〜♪」
聞きたくない。
私への愛情を独り占めにしてるあの歌声を、今は、今だけは聞きたくない。
頭ごと布団をすっぽりと被って耳を抑える。何も考えずに、何も感じずに、体を包み込む心地よい温かさに身を任せて、そのまま意識を手放した。
「私は赤髪海賊団の音楽家ウタ!歌で皆を幸せにするの!」
(私は赤髪海賊団ウタの姉 A。それ以上でもそれ以下でもない。その役割しか求められていない)
____
「A〜!!おーきーてー!!」
バンッと大きな音を立てて部屋の扉を開かれたかと思うと私の体をゆさゆさと激しく揺らしながら耳元で叫ばれる。姿を見なくても分かる、この声はウタだ。
どうやらいつの間にか二度寝していたようで、お昼の時間になっても食堂に現れない私を心配したベックに私を呼んで来てくれと言われたらしい。
…分かってたけど、シャンクスでは無いんだね。
「叫ばないで…」
寝起きというのもありただでさえ声の大きなウタの叫び声はハッキリ言ってうるさく感じてしまう。
幼い女の子特有のその高い声が、私の頭に響くその声がうるさくて、煩わしくて。思わず 「お願いだから、少しだけ静かにして…」 と主張するも、ウタは頬をぷくーっとふくらませたかと思うと私の布団を剥ぎ取り再び 「起きて!」 と叫んだ。
「もう〜!ルウがお昼ご飯作ってくれたんだから早くして!」
「…分かった」
こういう場合ウタの言う通りにしなければこの子は癇癪を起こして最終的にシャンクスに泣き付き私が叱られるのが日常だ。
今日は白ひげ海賊団の人達もいるからそんな情けない姿は見せたくないし、渋々体を起こすとウタは満足そうに笑って部屋を後にした。
「お、遅かったなA。お寝坊さん」
「ごめんベック」
「何も謝る必要は無いさ、寝る子は育つって言うだろ」
「うん。いただきます」
シャンクスとウタの所は騒がしいし、静かに朝を過ごしたい時はベックの所に行くようにしていた。
あの人がくれた薬のおかげで頭痛はだいぶ収まって今ではほとんど痛みを感じない。多分夕方ぐらいにはここを離れちゃうだろうし、それまでに名前ぐらいは聞いておきたいな。
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マシロ_mashiro(プロフ) - 雪さん» ウタの姉ポジって結構流行ってたので「またか…」って思われないか不安だったんですが、そう言っていただけて嬉しいです! (2023年3月31日 23時) (レス) id: 664df39994 (このIDを非表示/違反報告)
雪(プロフ) - イベントに参加していただいてありがとうございます‼うたちゃんのお姉ちゃんポジ結構好きなので読めて嬉しいです‼もう夢主ちゃんの心の叫びがすごく心に刺さって泣いちゃいました‼すごく面白かったです‼ (2023年3月31日 23時) (レス) @page44 id: 7fdb052437 (このIDを非表示/違反報告)
マシロ_mashiro(プロフ) - 白音さん» 他サイトの方は更新遅れて本当にすみません!!現在七割ほどは完成していますのでもうしばらくお待ちください! (2023年1月5日 7時) (レス) id: 664df39994 (このIDを非表示/違反報告)
白音 - 他サイトの方から見てました!そちらの方の更新も楽しみに待ってますね〜 (2023年1月4日 23時) (レス) @page40 id: 233ae7acb4 (このIDを非表示/違反報告)
マシロ_mashiro(プロフ) - 桔梗さん» 慣れない愛され?を書いたらちょっと精神年齢が幼くなっちゃいました笑。実はそろそろ溜めてた分が無くなるので更新速度は遅くなりますが、その分彼等との交流を執筆出来たらな〜って思ってます。 (2023年1月4日 20時) (レス) @page40 id: 664df39994 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:マシロ_mashiro | 作者ホームページ:http:
作成日時:2022年12月18日 17時