十六話 ページ18
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「…やっと見つけたよい」
「ぁ……朝の、えっと……」
誰も居ない船の端っこで一人蹲っていると、朝私に薬をくれたあの親切な人がわざわざ私を追いかけて来てくれたみたいだった。
「体調は……まだキツそうだな。部屋で寝といた方が良いぞ」
「ぇ、と。あの!あ、朝の薬ありがとう…です?」
昔見た本に載っていた敬語っていう言葉。
確か目上の人に対して話す時に敬語を使わないといけないから必死に思い出してお礼を言うと、男の人は「っく…」と何故か笑いだして「まだ幼いのに凄いな。だが正しくは‘‘ありがとうございます’’だよい」と丁寧に訂正までしてくれた。
……
「あー、嬢ちゃん。俺ァ聞きたいことがあったんだが……」
「…?」
「嬢ちゃんは赤髪…シャンクスや赤髪海賊団の事をどう思ってるんだ?」
「…」
てっきり、さっきの事を聞かれると思ってたのに…多分敢えて聞かなかったんだと思うけど、まさか赤髪海賊団は好きかどうかなんて聞かれると思ってもいなくて、予想外の質問にどう返答すれば良いのか分からなくて黙り込んでしまう。
何かを察したのか男の人は「…なんか悪かったな」 と言って未だに座り込んでいる私の頭をまるでシャンクスがウタにいつもやってるみたいに撫でてくれた。
‘‘ウタのお姉ちゃん’’でもなく‘‘シャンクスの娘’’でもなく、‘‘A’’という一人の少女に対してくれた久しぶりの優しさが嬉しくて…泣いちゃダメなのに、我慢しないといけないのに…涙が溢れて止まらなかった。
「好きなだけ泣け。子供は泣くのが仕事だよい」
「ぅぅ……ひっく……ぅん……」
私はAウタの姉でそれ以上でもそれ以下でもない。それが私に与えられた役目。
…違う。
私はA。ウタの姉でずっとずっと我慢してきた。だから、一回ぐらい我儘を言っても良いよね。
「あ、あの…」
「ん?」
周りに誰も居ないことを確認して、男の人に見えるように手をパッパっと動かす。
手の平を見せ、親指を曲げて、親指を閉じこめる。
例えるなら、5・4・0……パー・フォー・グーだろう。
「!……お前、」
「私、部屋に戻るね。ありがとう…ございました」
今度はちゃんとお礼が言えた。
男の人は何とも言えない表情をしていたけど、私は気にせず部屋に戻る事にした。
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マシロ_mashiro(プロフ) - 雪さん» ウタの姉ポジって結構流行ってたので「またか…」って思われないか不安だったんですが、そう言っていただけて嬉しいです! (2023年3月31日 23時) (レス) id: 664df39994 (このIDを非表示/違反報告)
雪(プロフ) - イベントに参加していただいてありがとうございます‼うたちゃんのお姉ちゃんポジ結構好きなので読めて嬉しいです‼もう夢主ちゃんの心の叫びがすごく心に刺さって泣いちゃいました‼すごく面白かったです‼ (2023年3月31日 23時) (レス) @page44 id: 7fdb052437 (このIDを非表示/違反報告)
マシロ_mashiro(プロフ) - 白音さん» 他サイトの方は更新遅れて本当にすみません!!現在七割ほどは完成していますのでもうしばらくお待ちください! (2023年1月5日 7時) (レス) id: 664df39994 (このIDを非表示/違反報告)
白音 - 他サイトの方から見てました!そちらの方の更新も楽しみに待ってますね〜 (2023年1月4日 23時) (レス) @page40 id: 233ae7acb4 (このIDを非表示/違反報告)
マシロ_mashiro(プロフ) - 桔梗さん» 慣れない愛され?を書いたらちょっと精神年齢が幼くなっちゃいました笑。実はそろそろ溜めてた分が無くなるので更新速度は遅くなりますが、その分彼等との交流を執筆出来たらな〜って思ってます。 (2023年1月4日 20時) (レス) @page40 id: 664df39994 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:マシロ_mashiro | 作者ホームページ:http:
作成日時:2022年12月18日 17時