「私は裏の人間ってだけで嫌うほど、視野狭くないです!怖いけど!一般人だから!」 ページ37
そう、あの日…。私が見たのは、川から引き上げられた太宰さんを覆いつくすほどの怨霊。しかも、その8割は女性ときた。
第一印象から最悪なのは仕方ない。
「そんな人がひとりかくれんぼなんてしたら、貴方に憑いている大量の霊に殺すための身体を与えるようなものですよ…」
「へぇ、知らないうちに私はそんなことになっていたのだね」
作之助の背中に隠れながらの会話。あの時放たれた殺気は今でも忘れない。
「君は私の事を知っている風だったからね、私はてっきり過去の事で警戒されているのかと思ったよ」
彼の言う過去の事とは、恐らくマフィアにいた時の事だろう。
「別に、裏の人間ってだけで嫌ったりしませんよ。怖がりはするかもですけど…。裏の人達にだって色々な事情があるだろうし、一概に否定するようなことはしないつもりです」
「ふっ、くく…!それは失礼」
心外なと云う意味を込めて視線を送れば、笑われてしまった。
確かに、作之助からマフィアだってことは聞いていたし、彼が武装探偵社に入っている事は知らなかったから、あの時はまだ裏の人だと思っていた。でも、どちらの側であろうと作之助の友達だ。
「あの時は、私も警戒してしまったからね。怖がらせてしまった事を誤らせてくれ給え」
仲直りしようと太宰さんが手を指しだす。
作之助の方へ視線を向けると、ほほ笑んで頷いた。
「…はい」
太宰さんと握手を交わした。
そのあとは、作之助と太宰さんが話に花を咲かせた。作之助は事前に坂口さんにも声をかけたが、仕事が忙しいらしく断られてしまったらしい。
私、すっごい疎外感を感じております。
「Aちゃん」
「うぇ!?はい!」
「織田作を、救ってくれてありがとう」
普段の道化のような態度は消え、友の生存を喜び、私に向かって太宰さんは頭を下げた。
「あ、いや…私は…」
子供達のお願いを聞いただけだ。と言えば、それでも、とまたお礼を言われた。
「そ、そうだ作之助、お土産は?」
「あぁ、そうだったな」
「お土産!?なんだい?」
お土産という言葉に目を輝かせた太宰さんに差し出されたのは、一冊の本。
「これは…?」
「俺が書いた本だ」
「!」
太宰さんへのお土産は、4年かかって作之助がようやく出版できた小説を選んだ。作之助の夢を知っていたのなら、きっと、これが何よりも喜んでくれるだろうと思って作之助に提案した。
「じっくりと、読ませてもらうよ」
「あぁ、そうしてくれ」
彼の頬に一筋の涙が伝った。
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銀狼(プロフ) - ゾッとして怖いって思っちゃうけど次のページの手が止まらない!2周目! (2019年12月2日 20時) (レス) id: fe6437d156 (このIDを非表示/違反報告)
泉桃花クラスタ - すごく面白くて、毎日楽しみにしています。更新頑張ってくださいね!楽しみにしています! (2019年3月30日 17時) (レス) id: 1a879c682f (このIDを非表示/違反報告)
カナネ - はじめまして、いつも読ませて貰ってますm(__)m 今また始めから読み返していて…間違えてたらすみません!コトリバコ5に誤字があったような気がします(>_<) (2018年3月22日 15時) (レス) id: 2f304636ee (このIDを非表示/違反報告)
amato(プロフ) - 猫勇者(ヒナっち)さん» 怖いと思って頂けたら書いた甲斐がありますね^^ありがとうございます (2017年8月21日 17時) (レス) id: 6e722ca549 (このIDを非表示/違反報告)
猫勇者(ヒナっち) - あ、更新頑張ってください (2017年8月21日 12時) (レス) id: 3b5a43403c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:amato | 作成日時:2017年7月23日 16時