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｢おじょーさん、水着も着ないで海へ？良かったらその辺でちょっと遊ばなーい？｣
『いや、仕事で来てんので結構です』
気やがったよ、キチガイ野郎。よーく見ろや、いくら水着来てなくても男だってわかるだろ。とか思いながらも口に乗せる言葉はあくまでも丁寧に。
キッパリ断ったのにも関わらず、諦めの悪い男はしつこく話しかけてくる。
｢でも、今は暇でしょ〜？ちょっとくらい良いだろ？｣
『……メンドクセェ』
危ない、思わず本心がもれた。自分でもビックリするくらい声は小さかったから聞かれてはいない……と思うんだけど、大丈夫かな。
｢めんどくさいって酷いな〜、傷ついちゃうよ？｣
『……あ、そすか』
聞こえてはいたが大丈夫だった。いや、断りきれてないから大丈夫では無いのか。つーか勝手に傷付いてろと吐き捨てたい。マグナみたいに凍らせても良いかな、とか魔法騎士団としては結構ヤバい思考が脳裏をかすめた時。
｢ハク、こっちおいでよ｣
『あ、ラック』
いつかの合コン事件の時とは打って変わって、いつも通りの声で俺を後ろから抱きしめるラック。いつもいつもタイミング良いな、コイツ。見張ってたのかと聞きたいくらい。
流石に彼氏持ちだと分かったらナンパ男はグイグイ来なくなった。変わりに少しタジタジになりながらラックの方を見ている。
｢オニーサン、この子ボクのだから。
あ、証拠見せてあげよーか？｣
『っ、馬鹿……！』
にこりと良い笑顔で男を追い詰めている。流石に証拠だとか言ってパーカーのチャックに手を当てられた時は俺の方が暴れそうになった。
当然こんなの見せられては男もここから逃げるように去って行った。すみませんーとか叫んでたのが滑稽だった。
『助けてくれたのはアリガト』
｢あはは、そりゃ助けるよ。って言うかホントの事言っただけだし｣
『……でも勝手に服脱がそうとすんなよ、ばかぁ…』
｢ごめんごめん、見せるつもりは無かったよ？｣
『その割には氣はガチだったけどな！』
｢あ、バレてた？首元とかだけだけどね｣
おどけるようなラックに怒れば、｢ボクのだー、って分かって良いかなと思って｣と言われた。コイツは俺の事になるととんでもない事しようとするから怖い。……それだけ愛されてる、と言えばそうなのかもだけど。
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作者名：白璢 | 作成日時：2022年1月1日 20時
